第四十三話 中古艇

ヨットが高寿命である事は、周知の事実となってきました。20年物なんてざらにある。10年なんかですと、新しい方という感覚です。30年物だって全然問題無い。いったいいつまで現役で走るのか? 解りませんね。

これはオーナーにとっては朗報です。業者にとっては、そろそろ買い換えて頂ければなんて事考えたり? でも、まだまだいくらだって乗れます。この事は、古い中古艇に値段がつくという事になります。昔は、もう20年ぐらい古くなると、それこそ二束三文的な感じがありましたが、今日では、そういう感覚は全く無くなりました。

寿命が長くなればなる程、そのヨットに施されてきたメインテナンスの善し悪しが大きく違って来る。
そういう意味では、ますます、メインテナンスが重要という事が認識されていく。日常のメインテナンスの他、10年に一度ぐらいは、全体を見直した方が良いかもしれません。次の10年を気持ち良く遊ぶ為に。

長く使わなかった備品類は下ろして、船内をスッキリ、そして、掃除して綺麗に。デッキ上のロープ類、セール、カバー類、これらもきちんと整理して、掃除。もう、これだけでも結構見違えるぐらいになります。時々、カビの生えたカバーとか、ほつれとか、ああいうのはみっとも無いですから。セーリングには支障は無いかもしれませんが、気分の問題です。遊びですから、気分は大事にしたい。
きれいにメインテナンスされてきたヨットは古くなっても、使い込んだ美しさを放つ。オーナーの人柄が伺えます。

そして、もう、何十年かはわかりませんが、相当古くなってきたら、レストアという方法で、全体をリフレッシュすれば、また長く乗れるようにできる。ヨットの形を変える事はできませんが、綺麗にはできます。その性能を変える事はできませんが、綺麗になれば、また、気分も新たになれる。

レストアにはかなりの費用もかかり、これまで、あまり多くの例は無い。現時点では、レストアにかかる費用が、その古いヨットに相応しいかどうかの瀬戸際かもしれません。しかし、もっと時が経ちますと、必ず、レストアが評価され、中古市場に出る時には、それが販売価格に反映するようになると思います。

ヨット全体を見回しても、あまりメインテナンスが行き届いたヨットは、そう多くは無いように見える。それゃあそうです。これはヨットの稼働率と比例するからだろうと思います。しょっちゅう使えば、当然ながら、メインテナンスもしたくなるものです。でも、滅多に来ないから、その気が失せる。

ですから、頻繁にヨットを使う事で、全ては良い方向に向かう。つまりは、ヨットが面白いのかどうかに関わってきます。面白く感じれば、頻度は上がり、面白ければ、良い状態をキープしたくなります。その頻度を上げる最も良い方法は、デイセーリングなんだろうと思います。何しろ、気軽ですし、時間的にもそう取られないし、それもシングルを可能にしておけば、いつだって出す事ができる。

中古に話を戻しますと、仮にメインテナンスが良くないヨットであっても、その時点でやればちゃんと復活させる事ができる。ただ、その費用がかかるという事になります。従って、メインテナンスの良いヨットを応分の価格で買うか、或は、そうで無いヨットを安く買って、後で手をいれるか?

それと、中古ですから、新艇より安い。いわゆる良いヨットを手に入れやすくなる。安い新艇と良いヨットの中古艇だったら、良いヨットの方を御勧めしますね。良いヨットというのは、やはり造りが違って、中古になっても、その良さを発揮します。速いという事では必ずしもありませんが。質が違う。
造りの質が違って、それはセーリングの質も違って来るかと思います。

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