第三十二話 メインテナンス

ヨットにメインテナンスは欠かせません。何しろ、何十年も持つし、どこまで持つかまだ不明ぐらい長く持ちます。欧米では古いヨットをレストアして、再び、結構な価格で市場に売りに出される事もあるぐらいです。FRPというのは恐ろしい、長持ちし過ぎだな〜と思わないでもありません。
本音を言えば、適当な処で、車みたいに買い替えを余儀なくされるという事があると、良いかなとも思わないでもありませんが?

車だって、メインテナンスを良くしますと、長く持つはずですが、だいたい、メインテナンスをあまりされない。古くなれば、いくら日本車が優秀でも故障も出てくる。そうなると買い換えたり。デザインもどんどん変わりますし。でも、ヨットの場合は、メインテナンスを施して、長く使う。デザインが変わるにしても、車ほどポンポンと変わるわけでも無い。デザインに寄っては、古くなっても違和感が無いのもあります。

FRP船体は、例えどこかにぶつけて、大きな穴があいても、修理可能です。エンジンだって、定期的にメインテナンスを行い、何かあっても初期に解決してやれば、これも長く持ちます。それで、後は、例えば、ビルジポンプとか、清水ポンプとか、トイレのポンプとか、冷蔵庫とか、そういう備品類が壊れる。でも、海という悪環境の中で使われるわけですが、それにしちゃ、これらも実際は長持ちしてます。家電なんかよりずっと長持ちではなかろうか?

セーリングで言えば、やはりロープ類とセールです。これらは消耗品であります。切れる迄使えるとか、破れるまで使えるとか、それは確かにそうかもしれませんが、そう考えますと、これらも非常に長持ちであります。しかし、ロープ類は徐々に硬くなって、操作がしにくいとか、セールはよれよれで本来の性能を発揮できないとかになってきます。そうなると、セーリングのスピードのみならず、質にも関わりますから、気持ちの良いセーリングをするなら、やはり消耗品として交換する事になります。

昔ですが、セールが大きく伸びて、丸くなっているのがありました。幅の狭い海域で、上りで、何度タックしても進まない。その狭い部分を抜けきれない。そういう事がありました。最後はとうとうエンジンを駆けましたが。これでは気持ちの良いセーリングは味わえないですよね。

ヨットは古くても構わ無い。しかし、小奇麗にしておきたいですね。乗るとき気持ちが良いです。ヨットは遊びですから、気持ちが大事だと思います。自分でやれる事は自分でします。できない部分は業者に頼んで、お金払ってやります。これを惜しむと、後々、もっと大きな事になる。業者に頼んだら、ついでに、自分でも学べば、今後は自分でもできるようになれる事もあります。ただ、でかいヨットは、装備がたくさんついていて、それをオーナーが全部把握するのは簡単ではありません。毎日、マリーナに通える人は可能でしょうが、たまになら、まず無理。覚えていた事も忘れたり。ですから、でかいヨットは、クルーにお願いしておくか、メインテナンス業者にお願いしておくか?

それが小さなサイズになると、オーナーが全てを把握する事も可能。また、マリーナに通う日数も多くなるでしょう。理想的には、オーナーが全部知る事だと思います。どこかに出かけて、トラブルになる事もあるわけで、そういう時に知っていれば安心です。それこそ、自己責任なのであります。
知らないと、実に簡単な事でも大騒ぎになりかねません。そして、遠方から電話頂いても、状況説明が的確では無い事が多く、その場合、こちらも助けようがありません。

良いヨットに、良いメインテナンス。これが重要で、何十年でも、オーナーよりも長生きなのです。それで、オーナーが変わっても、ヨットは生き続けていきます。海外では歴代のオーナーに敬意を表して、船名も代々受継がれるという事もあります。初代は誰、二代目は誰とか、そして自分は三代目とかです。それに、良いヨットは、メインテナンスも施しやすい。それも良いヨットの条件のひとつになります。

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