第二十四話 鋭敏さ

セーリングを重んじて、セーリングそのものを楽しみたいと考える場合、ヨットにはある程度の鋭敏さを求める事になります。重い、だるいセーリングでは面白さも減じられますから。かと言って、鋭敏過ぎるのも困ります。それで、その判断として、重要なのが、セール面積/排水量比、この数値が大きくなればなる程、鋭敏さは増す。もちろん、この値だけではありませんが、その他の要素にしても、この数値に対応していくと思います。

キールもその数値に応じて、デザインが施され、キールの前後幅が広いと鈍さを増し、短くなると鋭敏さを増す。舵も同様です。船底形状も数値が高いヨットはフラットになる。そのヨットに与えたセールパワーに従う様に、キールや船型をデザインしていくかと思います。

但し、どこまでそれを求めるか? 鋭敏すぎるヨットは操船が大変になる事もある。もちろん、豊富な経験者ならば、その対応もできるかもしれませんが、自分次第という事になります。これは強風時の事で、微軽風になると、高い数値のヨットでも、絶対スピードは当然落ちてきますので楽にはなりますが、ただ、他のヨットより速い。問題は強風時という事になります。

微軽風だったら容易でも、強風時はそうは行きません。緊張度がマックスになります。それで、どこらあたりが良いのか? 微軽風もあれば、強風もある中で、ヨットにどの辺りの鋭敏さを求めたら良いのか?

もちろん、各人の経験や腕次第という事もあるのですが、一般的に言って、セール面積/排水量比が20前後と25前後のふたつにポイントがあるような気がします。もちろん、数値が25の方が鋭敏なヨット、より走るヨット、スポーティーなヨットです。

20前後なら、一般の方々が、それもスポーティーさを感じながらセーリングを楽しめる数値ではないかと思います。そして、もし、腕に少し自信があり、経験もあるなら、25前後という選択もあります。もちろん、この数値であっても、一般的に乗れないという話では無く、スピードが上がりますから、強風時の対応を早目にするかもしれません。リーフを早目にです。もちろん、慣れも出てきます。もちろん、ここで言っているのはシングルハンド前提であります。

レーサークルーザーで、レース寄りのヨットだと、だいたい25からそれ以上、クルージング寄りのレーサークルーザーで、20からそれ以上ぐらいだろうと思います。本格レーサーになりますと、多分、30前後ぐらいになるかと思います。

デイセーラーでは、それらのパフォーマンスをシングルで操船できるように造られています。実際、この数値が15前後あたりから、上は30前後まであります。全てシングルハンド仕様ですから、大抵のセーリングパフォーマンスに対応ができます。ただ、一般的な事を考えますと、やはり20前後と25前後かなと思います。

加えて、もうひとつ要素を上げると、そのヨットのスタビリティーです。セールパワーがあればある程、高い安定性が無ければならない。或は、クルーの体重移動による安定性の創造ですかね。デイセーラーはもちろん、シングルですから、ヨットそのものに安定性が高くなければなりません。

その数値に応じて、風に対するスピードが上がり、当然ながら鋭敏さも増してきます。程良い鋭敏さを楽しむなら、緊張も少しあって、スポーツセーリングを楽しめる。数値が20前後ですと、微風時には、ちょっと物足りなさを感じる事もあるかもしれません。そういう時にこそ、微軽風用セールを展開しますと、この数値がグ〜ンと上がりますから、スピードがでます。そして、強風時でも安心して走れます。もし、数値が25なら、微風でも、少し速くなりますが、でも、微風は所詮微風、そこで同じ様に微軽風用セールを展開するならもっと面白くなる。今度は強風です、どうしても、20前後のヨットと比べたら、重いバラストをぶらさげたヨットであっても、セールパワーがでかい分、ヒールする度合いは大きくなります。ですから、早目のリーフという事にはなろうかとは思います。しかし、リーフもセール調整の一部であり、同じ風速でももっと速くはしれますから、それをどう考えるか?
さらに速いヨットだってあるわけですから。

速いヨットであればある程、鋭敏さを増す。速いヨットは面白い。しかし、鋭敏ですから、その分、細かい操作も要求される。でも、それが面白さになります。つまりは、どこまで鋭敏であれば、楽しめるのか?それが、各人に寄って異なるわけで、敢えて、それを分類しようと、20と25という数値を出してみました。微軽風では25の方が速い、でも、強風になると、もちろん25の方が速いが、20の方が楽という事は言えます。

最後に、その船体の強度も重要です。速くなればなる程、受けるストレスも大きくなりますから、それに対応する船体の強度が重要になり、これが充分に硬いと、セーリングに滑かさを感じます。重要な要素です。

という事で、まとめますと、ヨットのセール面積/排水量比、スタビリティー、船体強度、という事いなるかと思います。

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