第一話 気軽に、軽快に

我々はヨットや海をたいそうに考えすぎるのではなかろうか? もちろん、これからロングのクルージングに出ようとするなら、それなりの準備が必要にはなります。しかし、デイセーリングだったら、何の準備も必要無いし、もっと気軽に接する事を習慣に持つというのは重要だろうと思います。それがデイセーリングのデイセーラーのスタイルですから。気軽に、軽快にです。

週末の仕事終わりに、仕事場からマリーナへ直行するビデオが、以前、YOUTUBEにありました。金曜の夕方は、仕事を早く片付けて、その男はセーリングに行きたくてうずうずしている。そして、夕方のセーリングを満喫するわけです。これは言わば、スポーツみたいなもので、夕方にジムに通っている様なものという感じもします。それぐらい気楽なのであります。

準備も要らない。マリーナへ行って、もし、過ぎる強風だったら、やめておけば良い。チャンスはまたいくらでも来る。だから、がっかりもしない。また今度です。気軽です。

そんなイメージが受けたのか、欧米では次々に新しいデイセーラーが生まれ続けています。もちろん、デイセーリングを楽しむにデイセーラーで無ければならないわけじゃない。でも、専用のデイセーラーだったら、もっと気軽になれて、セーリングを楽しめる。キャビン拡大競争にそっぽを向き、独自の路線で走り始めたデイセーラーが、一部の人達の心を掴んだ。そして、それが拡大してきています。

ヨットを別荘にしない、遠くに出かける暇も無い、旅より、セーリング、そういう方々が世界中に増えているという事になります。その最大の魅力は、自分の心の気軽さと、ヨットが持つ軽快さにある。

もちろん、でかいキャビンを否定するつもりは毛頭ありません。ただ、使い方が全然違う。昔は、誰でも最初はレースじゃないから、クルージング艇だった。その時のクルージング艇は今程、キャビンはでかくなかった。しかし、その後、キャビン拡大競争が進み、多分に、これは欧米人が別荘的に使うからではないかと思いますが、そのお陰で、デイセーラーという新しいジャンルが、一方で誕生する事になったのかもしれません。

今日のデイセーラーコンセプトを、多分、最初に作ったのは、ある人が散々レースをしてきて、そのレースから引退したいと考えた時、それでも、やはり軽快なヨットが欲しかった。しかも、シングルで、気軽に走れる軽快なヨット。そこで、あるデザイナーに依頼して造ったのが最初だろうと思います。このイメージは、やはり、気軽さと軽快さにあったのではないかと思います。

旅をするには、準備が必要です。燃料も食料も、計画も必要です。それに天候の情報とか、その入手手段とか。しかし、デイセーリングだったら、そんなのは不要。その気になって、マリーナに行って、そこで判断しても良い。出てから、強風になったら、セール下ろしてすぐ帰る事もできる。食料なんて、不要だし、自販機やコンビニで間に合わす程度で良い。マリーナに行って、出れそうもなければ、帰れば良い。それより、マリーナに来て、5分で出して、スイスイ感を味わってくる。気軽に、軽快に走ってくる。そのフィーリングたるや、決して旅に劣るわけでも無い。しかし、異なるフィーリングです。それが、欧米で受けた。だから、増えてます。

ヨットを別荘にする事が無い日本人として、旅の醍醐味を時間をかけて楽しむか、或は、気軽に日々のセーリングを満喫するか? 忙しいと言われる日本人にとっては、デイセーリングはとても合うスタイルだろうと思う次第です。現実に、稼働率が最も高いのは、どんなヨットかは兎も角、デイセーリングをしている人達だろうと思います。

ただ、旅にあこがれながら、暇が無いので、仕方無くデイセーリングというなら、気持ちははるか遠くにあるかもしれません。そうでは無く、デイセーリングに気持ちを置いて、もっと楽しむ事を考えた方が良いかと思います。滅多に行けないクルージングより、日々楽しめるデイセーリングをより充実させる。とは言っても、気軽に、軽快にであります。

どうせ乗るなら、カッコ良くと誰もが考えます。デイセーラーの基本はみんな同じですが、でも、デザインはいろんなのが出てきます。クラシック系やモダン系、それぞれに、キャビンの事をあまり考える必要は無いので、全体バランスとしても美しいヨットばかり。もちろん、好みはあるでしょうが、その美しいヨットを、気軽に、軽快に走らせる。それが今日のデイセーラーの基本にあると思います。さらに、セーリング性能においても、バリエーションが増えてきました。スポーツカーにもいろいろあるのと同じです。

美しさはいろいろあるけれど、セーリング性能もいろいろあるけれど、気軽に、軽快にセーリングをカッコ良く楽しむ。これがデイセーラーの基本コンセプトかなと思います。是非、デイセーリングを見直して頂きたいと思うわけです。

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