第七十九話 ジブとジェノア

ご存知の通り、最近のヨットではノンオーバーラップジブが増えてきました。これによって、タッキングは楽になります。セルフタッキングジブで無くても、105%程度のジブなら、タッキングも楽です。
でも、何故、そういうセールプランにするのか?

ショートにおけるセーリングではタッキングが頻繁に行われるかもしれません。だから、ジブが良い。しかし、ロングクルージングの場合、タッキングは非常に少なくなります。だったら、ジェノアだって良いという事になります。

一般的なクルージングを考える場合、実際はセールで走る方は少なく、エンジンを使う事が多い。という事は、ロングでのセーリングをあまり考える必要も無い。つまり、そういうヨットであっても、セーリングする時はショートなのですから、やっぱりジブの方が良いという考え方かもしれません。

近場で遊ぶデイセーリング、これはセーリング重視になりますから、セーリングを如何に使い易く、且つ、面白くできるか、そして、ロングは旅ですから、旅をセーリングで行くならジェノアの方が良い。しかし、日常のセーリングと、旅をエンジンで行くなら、ロングのセーリングはあまり考える必要は無いのかもしれません。

という事で、ショートはセーリング、旅はエンジン。その上でのセールプランは、ノンオーバーラップジブかセルフタッキングジブ、そしてでかいメインセールという事になります。もちろん、セーリングには第三のセールもあります。

本格的にロングの旅をするのであれば、エンジンばかり使ってはいられません。セーリングが主になります。しかし、ショートの旅なら、沿岸の旅なら、だいたいですが、エンジンを使う事が多くなります。そして、現実には、そうそう遠くへ行けるものでもありません。という事は一般的に考えますと、セーリングはショートにおけるセーリングを考える事になると思います。

つまり、日常には近場でセーリングを楽しむ。たまに旅をするのはエンジンを使う。ならば、セーリングは近場のデイセーリングが主体となり、そこにどうしたら良いかを考えます。その答えが、小さなジブと大きなメインというセールプランになるかと思います。

ただ、大きなメインという事になりますと、セールパワーも当然大きくなります。そうすると、メインシートを引く力も大きくなる。その際、やはりブームのエンド近くから引いた方が力が少なくて済みます。メインシートトラベラーをキャビン天井の上に設置している場合、ブームの中央あたりから引く事になり、より大きな力がかかります。だから、それなら電動ウィンチでという事になるかもしれませんが、ブーム自体に大きな力がかかる事に変わりありません。ブームの負担が大きいという事です。まあ、強風時には乗らないという事なら関係無いかもしれませんが。

しかし、ショートでセーリングを楽しむという点を重視しますと、やはりジブセールとそれに伴う大きなメイン、これはクルー不足とか、シングルハンドとかを考えてもそれが良いかなと思います。
それで、ショートにおける、デイセーリングとそれにせいぜい1泊か2泊程度のショートクルージングなら、デイセーラーで十分だろうと思います。或は、デイセーリング+もっと長距離の旅という事を含めるなら、セーリングを重視したヨット(大抵はメインシートがブーム後方からリードされる)が良いかなと思います。

偏見かもしれませんが、メインシートトラベラーを邪魔者扱いして、コクピットから追い出してしまった。その頃から、セーリングは二の次になり、キャビンやコクピットの広さが重視され、コクピットにテーブルまで設置するようになりました。それはそれで悪いわけでは無いのでしょうが、気持ちがセーリングから離れてきたかもしれません。その代わり得た快適キャビンでは、エンジン走行で良いから、もっと旅を楽しもうという事かもしれません。欧米では、その快適キャビンを別荘とする人達も多い。

我々日本人は、別荘としては使いきれていない感じもします。だったら、クルージングをと思います。しかし、反面、忙しい。ロングにしょっちゅう行く暇は無い。それで、結論なのですが、割り切れるならデイセーラーが最高だろうし、ロングクルージングを含めるなら、セーリング重視のクルージング艇の方が合うのではなかろうか? アルコナヨットを取り扱い艇に含めた理由もここにあります。

次へ      目次へ