第五十六話 ドライブ

セーリングを大きく三つに分けるとしたら、旅とレースとドライブ、この三つではないかと思います。この内の、ドライブこそがデイセーラーの核となるセーリングになります。ドライブですから、そのドライブフィーリングを楽しむ事になります。という事は、セーリングの質を問う事でもあります。

スピードはそれぞれですが、しかし、いずれも高い帆走性能と安定感、そしてシングルでの操作のし易さ。これがあるからこそ、ドライブが容易であり、面白くもなります。容易である事は重要です。しかし、簡単なだけでは物足りない。操作次第では、いろいろ反応してくれて面白い。それがデイセーラーです。操船してそのフィーリングを楽しみます。

つまり、デイセーラーはセーリングが面白い。高いレベルの技術を持つ方は、いろいろ細かい操作をされるでしょう。逆に、初心者の方はできるだけ操作が簡単なのが良い。そのどちらにも対応できているのがデイセーラーなのです。

今回輸入致しましたディナミカ940は、そのドライブ感を彷彿させます。スイスイと滑る様に、軽やかに走るフィーリングは何とも言えません。ただ、メインセールが大きいので、風が強くなったら、風をいかに逃がしてやるかがその操作になるかもしれません。しかし、このヨットの安定性は抜群でした。吃水、2.1mの細いキールに、1トンを超えるバルブが最下部に設置されています。このキールの深さと重さが効いてます。それにもちろんハルの硬さも感じます。

この船体重量の軽さは2.2トン、キールが1.17トン、バラスト比53%もあります。この軽さにして、このバラストの重さ。軽やかにして、高い安定性がある。まあ、シングル想定ですから、当然必要な安定性です。セールも大きいし。

重量に関して言えば、例えば、車に一人で乗る時、そこそこ良い感じの加速感とかを感じでも、そこに5人乗りますと、すごく重さを感じます。鈍い感じがします。この違いとも言えるかもしれません。軽いと軽やかなんですね。そこに軽くする為にバラストも軽くしてしまうと、安定性が削がれます。
クルーがハイクアウトして乗るヨットならまだしも、シングル想定ではそうはいきません。という事で
ディナミカ940は軽いにもかかわらず、重いバラストを実現している処にデイセーリングとしての意味を感じます。このドライブ感は素晴らしい。

但し、強風時、スピードも出ますから、それなりに風を逃がす操作で対応しなければなりません。リーフもそのひとつ。その対応に慣れていけば、最強のデイセーラーなのかもしれません。ただ、初心者には御勧めは致しません。微軽風には速い、しかし、強風もあるのが自然ですし、その対応が要求されます。もちろん、他のヨットだって強風への対応は必要ですが、速いだけに、鋭敏なだけにより繊細でもありますから。でも、それさえ慣れてしまえば、実に面白いヨットだと思います。

全てのデイセーラーはドライブ感を遊ぶヨットです。その為にセーリングの質を向上させます。キャビンが重要ではありません。セーリングが重要なのです。それもスピードだけが重要なのではありません。セールフィーリングが重要です。

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