第三十二話 シングルで遊ぶ

シングルは寂しいとか言わないでください。それゃあシングルでいつもピクニックしているならそうかもしれません。ピクニックなら、誰かと一緒の方が楽しいかもしれない。それは楽しさを求めるとそうなります。

シングルで遊ぶというのは、シングルだからこそ、何かを思う存分求める事ができる。それは楽しさでは無く、面白さでなければならないと思います。ですから、シングルで出る時は、面白さを求める。つまりは、セーリングを求める。

楽しさと面白さの定義はどうかという事になりますが、楽しさはその時限定の喜びみたいなもので、面白さは、追求する事によって発生する継続的な喜びではないかと思います。簡単に言えば、楽しさはその時限り、面白さはこれからずっと続く探求にある。

ですから、ピクニックは楽しいし、セーリングは面白い。ピクニックは困難があれば、やめて帰る。セーリングは困難があれば、それを乗り越える事を考える。

この二つを意識的に使い分けて、どちらかひとつでは無く、両方をうまく楽しむ事を考えた方が良いかと思います。その使い分けにおいて、シングルだと重宝します。ピクニックでは、セーリングの未経験者を招待する事もできます。セーリングにおいては、誰に気兼ねなく、思う存分セーリングを味わう事ができます。

ところで、ピクニックにおいても、良い風が吹いてきますと、ヨットは良い感じで走ります。しかし、多くの場合で、ゲストが居るとできるだけおとなくしく走る。ゲストを驚かせない様に。そういう気遣いをされる方も多い。しかし、そういう時にこそ、セーリングの面白さを少しでも味あわせてあげると、ゲストにとっても良い体験になると思います。おとなしく走って飽きないのは最初の30分程度ではないでしょうか?それでも飽きないとしたら、オーナーの接待が上手なのかもしれません。

大きくヒールして、ぐんぐん走ってもヨットは安全ですから、オーナーは平気な顔して走らせる。多少のスプレーを浴びても、オーナーは大笑い、そんな感じのセーリングを体験しますと、ゲストだって、最初は驚くかもしれませんが、きっとセーリングを気にいってくれるのではないかと思います。

ゲストにとってヨットはエキゾチックな体験です。でも、その本当のヨットらしさはセーリングにあり、しかも、安全である事です。ゲストだって多少のスリルを味わっても、安全性が担保されていれば、そのスリルを楽しむ事ができる。オーナーに対する信頼が安心につながります。

あるオーナーの話ですが、その日の終わりに、ゲストは必ず、また乗せてくださいと言って帰ります。しかし、穏やかピクニックだった時は、まず殆どが二度と来ない。その反面、スリルを味わったゲストこそ、二度目がある。吹かない時は仕方無いにしても、それでも、吹いた時の面白さを語った方が良いかもしれません。ヨットはこういう時もあるけど、面白さはこんなもんじゃない。

それもこれも、普段にオーナー自身がセーリングを堪能していないといけませんね。是非、シングルでのセーリングを堪能していただきたいと思います。シングル仕様だからこそ、ゲストが来て、ゲストにセーリングに参加してもらって、一緒に走らせる感覚も味わって頂けます。

シングルハンドは、寂しいセーリングでは無く、どうにでもできる、自由自在のセーリングなのであります。

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