第九話 スタビリティーの評価

安定した状態で、スピードを楽しみたい。それがデイセーラーです。それがスピードを高めると、安定性が減じられる。その矛盾する二つの要素を何とか解決しようというのがデイセーラーです。

パフォーマンスを高める為に、セール面積を大きくする。しかし、大き過ぎるセールは取り扱いがやっかいになる。よって、セール面積はある程度は限定されます。それで、船体側を軽く造る事を考えます。それには、強度も減じるわけにはいきません。それで、構造や工法が論じられる事になります。

ある一定のセールパフォーマンスを設定し、そして許容できるセール面積を設定する。すると、必然的に排水量が決まってきます。その排水量で強度を維持しながらどのように建造するか?
現在の最も効果的な工法はバキューム/インフージョン工法です。

そして、その排水量において、キャビンの割合、船体の重さ、バラストの重さを考え、デイセーラーでは、より軽くするために、キャビンをシンプル化しています。それでも、船体とバラストの重量比の問題が残ります。

極めて、高い安定性を求めたとしたら、船体をハイテクで建造して、極めて軽くし、その代わり、バラストを重くする。しかし、かなり高価なヨットになるでしょうし、キャビンも殆ど無いかもしれない。それでは、なかなか、皆さんに受け入れられない。よって、そこまではせず。それで、二つの考え方があると思います。

例えば、アレリオン28というヨットですが、セール面積/排水量比は約18です。このヨットはもう
20年以上前にデビューしたヨットで、当時は兎も角、今日の感覚(人にも寄りますが)では、パフォーマンスとしては、強風に良く走り安心して乗れます。実に面白いです。しかし、それが微軽風になりますと、もうちょっとという気になるかもしれません。

それで、微軽風用セールというものを考えました。微軽風の時はこのセールを使えば、セール面積/排水量比は格段に高くなります。当然ながら、微軽風でも面白いセーリングを楽しむ事ができます。すると。微軽風に面白く、強風にも強い。

これがひとつの考え方で、もうひとつは、セール面積/排水量比を高めます。例えば、22とか、23とか。そうすれば微軽風でも、もっと走る事ができる。でも、セールパワーが大きくなった分、スピードは出ますが、今度は強風において、細かい操作も増えるだろうし、これはスポーツ性の高まりなのですが、この最後の対応としてリーフします。

つまり、強風においてはリーフで対応する。前者は微軽風において、微軽風用セールで対応する。
どっちが良いかは、各人のセーリングに対する考え方の違いで、スポーツ性をどこまで求めるか次第ではないでしょうか?

そのスポーツ性において、セール面積/排水量比がアレリオン28の18〜アレリオン33スポーツの25程度の範囲が良いのではないかと考えます。強風でも安心して走れ、微軽風には専用のセールを使う。或は、もっとハイパフォーマンスで、強風にはリーフで対応する。どちらも、シングルを前提としています。もっとハイパフォーマンスもありますし、もっと安定性の高い、でも、パフォーマンスが低いヨットもあります。しかし、一般的に、いろいろ好みはあるけれど、スポーツ性としてはこの範囲ぐらいが適度に我々がスポーツとして楽しめる範囲ではなかろうか?

という事で、やっぱり、一般的なデイセーラーが既に落ち着いてきたパフォーマンスあたりが最も使いやすい性能ではないかと思います。ところで、微軽風用セールですが、ダウンウィンドを含めて考えた場合、ジブとメインだけでは物足りないかもしれません。すると、ジェネカーを持つか? どうせ、もう一枚持つなら、微軽風用セールを一枚持つという考え方も成り立つと思います。ジェネカーより上れますし。もちろん、考え方にも寄ります。

しかし、全ては乗る側の感覚の問題です。スポーツ性をどの程度に考えるかの違いによって選択は違ってきます。それで、今乗っているヨットのデータを出して、それと比較して考えると検討しやすいかと思います。

最後に、デイセーラーはセーリング重視のヨットですから、そこらあたりを充分に検討されたうえで、デザインされ、建造されています。セーリングを楽しむ事を第一とした時、どこらあたりのパフォーマンスと安定性が良いかが充分に検討された結果だと思います。ただ、オーナー側の選択として、スポーツ性の違いを選択する余地がある。そのように考えられるかと思います。

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