第八十一話 ギヤシフト

車はスタートからスピードが上がっていくに従って、ギヤを入れ替えます。最近のは殆どがオートマチック車ですから、機械が自動的にそれをやってくれます。ヨットの場合でしたら、それをセールで行う事になります。

スタート時にはパワーが必要ですから、深いドラフト、それから徐々にスピードが上がって、浅くしていく。それをするのは、バックステーアジャスターとアウトホール。

セールの場合はこのドラフト調整のみならず、形の調整と風に対する角度調整があります。という事は、ドラフト、形状、角度、この三つが必要になります。おっとその前にセールの大きさも決めなくては。

風速に見合うセール面積を決め、風向に合わせて、角度を決め、ドラフトの深さを決め、そして形を決める。ちょっと複雑かもしれないが、何も、全部がピタリとわなければ走れないわけじゃない。いい加減でも、それなりに走れるのがヨットの寛大な処です。だから、上手くなるというのは、これらが、少しづつ、調整が適格に近づくという事になります。

そうなると、より速いだけでは無く、楽に走れるようになって、スムースになって、フィーリングもグッドになっていく。さらに、風にはいろんな風があるので、そのひとつに適格でも、風が変われば、またセールも変える。そのいろんな風にもより適格に合わせる事ができるようになる。

風速はものすごい強風もあるだろうが、デイセーリングでそんな風の中を走る事は無い。外洋ならば我慢してでも走らなければなりませんが。例えば、12、3メートルとか、人にも寄りますが。そうすると、それ以下でのセーリングにどう合わせるかを考えれば良い。それ以上になったら、セール下ろして帰ります。

まずは、セール面積。次に角度、ドラフトの深さ、その時のドラフトの位置をカニンガムで調整。次に、ツイスト。

これらの調整には、目安が必要ですから、風向風速計とスピード計を使えば解りやすい。風速を意識して、セールを意識しながら調整します。適当にやるより、その方が上達は早い。最初の基本的な事を意識しておくと、後々、楽になると思います。

さらに、もうひとつの目安が舵です。舵で真っ直ぐ走る。舵がフラフラしていたら、その都度風向が変わる事になりますから。

計器と舵の目安で、適当では無く、徐々に理屈を考えながら調整をしていく。試行錯誤です。今走っている状態がグッドだとしても、ちょっと変えてみて、どう変わるかを見ても良いかと思います。兎に角、セーリングの試行錯誤ですから。

そんなこんなを続けていますと、当然ながら、感覚的にできる事が多くなります。身についてきている証拠だと思います。そうすると、自分の感覚にもっと余裕が出てきて、感じれる範囲が広くなる。すると、セールフィーリングの幅が広くなって、面白さは、頭脳と感覚の両方を楽しめる。

極端な言い方をしますと、海はどこでも構わない。エーゲ海だろうが、カリブだろうが、博多湾だろうが、海は海。海を愛でるには、カリブが良いのかもしれませんが、セーリングなら、どこだって良い。注目しているのは、セーリングでありますから。例え、カリブに居るにしても、セーリングする時は海が問題なのではありません。そのカリブにしても、毎日だったら、そのうち、違うどこかに行きたくなる。変化が無いから、そうなります。でも、セーリングは変化しますから、場所が問題ではありません。

そうは言っても、いつかきれいな海でセーリングしたいというのが人情です。だったら、飛行機に乗って、カリブで、チャーターしても良い。だったら、カリブだろうが、地中海だろうが、どこでも、楽しむ事ができます。何も、日本からヨットでカリブに行かなくても良い。それは大変な事であります。チャーターするのは、日本からヨットで行くより、遥かに楽だし、簡単に、どこへでも行ける。

本格外洋派には、納得できないでしょうが、そういうやり方で、気楽に遊ぶ方法もあります。どっちでもお好み次第。冬山に上る手もあるが、夏山もある。厳しさは全然違いますが、それなりの楽しさ、面白さはあります。大冒険家かプチ冒険家か?普通は後者で充分面白い。

ギヤシフトは、理屈を考えて試行錯誤をします。それで、正解を求めようという態度です。いい加減の適当な調整ではありません。それらを身につける事で、思考から感覚へ。すると、もっと面白さが湧いてくるようになるのではないかと思います。

ピクニックなら適当でも構わないかもしれないが、セーリングの時はちゃんとしたいです。だから、楽しさと面白さは違ってきます。

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