第六十八話 シンプル

デイセーラーはみんなシンプルです。キャビン内を覗いて見ても、余計な物は殆どありません。あるのは、シートとバウのバース、それにトイレぐらいです。そしてトイレは兎も角、他の類はみんな構造的補強にもなっています。無駄が無いと言い換える事もできます。

デイセーラーの殆どは、走る事を楽しむ為にあります。それがどんな意味を持つか? もし、誰かとデートセーリングでもしたいなら、それも簡単にシングル操作が可能です。もし、家族を載せて、ピクニックを楽しみたかったら、それも簡単です。もし、クルーを連れて、レースに参加して楽しみたかったら、それもOK, よく走るし、充分楽しめます。そして、もちろん、シングルの本気セーリングは、このデイセーラーの得意とする処です。

シンプルとは、ある一点に殆どを集中させて、そこに濃厚な味わいを持つ。だから、目的以外はできるだけ無くして、シンプルにします。デイセーラーはそのシンプルさをシングルハンドセーリングに置いてます。だから、上質のセーリングを簡単に味わう事ができます。

以前、全くヨット未経験の方がおられ、三日間一緒にセーリングをしました。その方、四日目からはもうシングルでセーリングを楽しむ事ができました。もちろん、基本的なシート操作とティラー操作だけですが、それでも、ちゃんと行きたい方向へ走る事ができる。それだけ操作は簡単にできるという事です。

しかし、その同じデイセーラーで、大学時代にヨット部のキャプテンを務めた方も、セーリングの妙を楽しみ、レースも時折参加されていました。デイセーラーは、セーリングに関する限り、初心者でも、ベテランでも楽しめる。セーリングのポテンシャルは、オーナーに呼応して走らせる事ができるというものです。実に懐が深い。

シンプルにセーリング自体を楽しむ。ヨットにいろんな物があると、便利そうで、快適そうで、良い様な気がします。しかし、ある一点に集中した装備ですと、そこに濃厚な味わいを得る事ができる。
しかも、簡単でありながら、妙でもあるんです。

セーリングは深いと言われます。その深さを知るには、シンプルが良い。そのシンプルさだからこそ、集中力が増し、感知能力が上がり、セーリングの妙を堪能する事ができるかと思います。これは決して難しい事では無く、誰もがその気になれば、セーリングの深さを堪能する事ができます。

ヨットマンという言葉は、潮っけたっぷり、外洋、あらゆる困難を乗り越える様な海の男というイメージがあるかもしれません。しかし、都会的で、知的で、センスの良い繊細なセーリングを目指すセーリングもあります。デイセーラーはシティセーリング、遠くは目指す代わりに、頭脳と感覚のゲームを楽しみます。そして、誰もが気軽にできる。

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