第五十九話 スポーツ度と排水量

あるヨット、32フィートのデイセーラーがあります。このヨットのスポーツ度は23です。結構高いです。しかし、驚くなかれ、このヨットのセール面積はジブとメインの合計でも26.5uしかありません。これは同じようなサイズのクルージング艇の恐らくメインセール1枚分ぐらいでしょう。それだけセールは小さい。しかし、スポーツ度は23もあるんです。という事は排水量がそれだけ軽いという事になります。このヨットの排水量は、わずか1、281KGしかありません。クルージング艇ならこれの4倍ぐらい重いと思います。ちなみに、バラスト比は48%です。

   という事は、セール面積は小さいので、
   操船も楽々でしょう。それでも、スポーツ
   度は高いので、面白い。つまり、排水量
   を軽くすればする程、楽に走れる事にな
   ります。但し、このヨットには、一切のキャ
   ビンがありません。これがちょっと難点とも
   言えます。しかし、そこまで割り切れるなら、   そういう楽々でありながら、高いパフォー
   マンスを満喫できるという事になります。

   それで、これは極端な例で、排水量につい
   ての影響力を言いたかったわけですが、
   通常は、こういうヨットには、もっとセール
   面積を増やして、スポーツ度をもっと高め
   るデザインをする事が多いです。その為
   にここまで排水量を軽くしたわけですから。
   ですから、このヨットはかなりユニークと
   言えます。




造船所が作るのは船体です。これを如何様に建造するか?どの程度のスポーツ度に設定するか? これによって、排水量やセール面積が決まります。

全くキャビン無しにする程には割り切れない。やっぱり、少しは欲しい。そうなると、その分の重量は増えます。そのうえでのスポーツ度を造る事になります。つまり、何を言いたいかというと、排水量が非常に影響力が大きいという事です。

セール面積は、クルージング艇を基準にするとしたら、デイセーラーのセールはそれより少し小さいぐらいです。それでも、スポーツ度が高いのは排水量が軽いからです。レーサークルーザーの方がセール面積は大きい。

ある沿岸用クルージング艇、31フィートですが、排水量は4、850KG、セール面積は49.20u
スポーツ度は17.6です。同じサイズのレーサークルーザーは排水量が3、750KG、セール面積は62.91u、スポーツ度は26.4です。排水量が軽くなって、そのうえ、セール面積がでかい。
でも、クルー有りでのセーリングですから、それで良い。

デイセーラーの場合、ディナミカは特別ですから、別の例で行きますと、同じサイズではありませんが、オプティオ9は排水量が2、380KG、セール面積は43.5uです。セール面積はクルージング艇より小さく、このヨットのスポーツ度は25あります。

つまり、デイセーラーはシングルハンドを前提にしている事もあり、セール面積は小さめです。ですから扱い易い。しかし、スポーツ度を上げる為に、セーリングが軸ですから、その為に排水量を軽く造ります。もちろん、バラスト比は高いので、その分、さらに船体は軽く。よって、キャビンは狭いし、シンプルにします。そして、デイセーラーは軽くしますが、硬くします。そこが重要ポイントです。
楽に操作ができて、パフォーマンスは高い。

ついでながら、キャビンは狭いとは言っても、それなりの長さのスペースがありますから、我々一般的な使い方としては充分ではないかと思います。

次へ      目次へ