第三十八話 目指す処

デイセーラーが目指すのは決してレースではありません。一部にはレーサーの様な超ハイパフォーマンスデイセーラーもありますが、確かに、ヨーロッパではワンデザインでのレースも楽しんではいます。しかし、それでも、レ−スを主体に考えてはいない。何故なら、レース主体なら、シングルハンドなんかにする必要は無いからです。

先日、イタリアのディナミカヨットの造船所に行きました。ディナミカは超ハイパフォーマンスのデイセーラーです。さぞ、向こうではレース一辺倒かなと思っていたのですが、ところがどっこい、確かにレースも楽しんではいるが、しかし、その多くはシングルや家族でのセーリングを楽しむ事が多いとの事。ちょっと驚きもありましたが、それは、新鮮なものでもありました。彼らは、超ハイパフォーマンスを狙ってはいるものの、それはセーリングを多いに楽しむ為であります。

そこで、あらゆるデイセーラーが目指しているものとは、やはり気軽にセーリングに接する事なんだろうと思います。それはレースにおけるセーリングでは無く、セーリングを楽しむ為のセーリングであり、その為のハイパフォーマンスなのであります。イタリア人は特にスピード狂かなと思わないでもありません。普通に速いのが好きなんでしょうね。

どの程度のパフォーマンスを好むかは別としても、重要な事は、デイセーラーはセーリング主体であり、どんなに速いデイセーラーであろうとも、それは必ずしもレースを意味しないという事です。だから、やっぱりシングルハンドにこだわる。

この意味する処は、セーリングをいかに乗りこなして、進化していけるか? もちろん、同時に家族とのファミリークルージングならぬ、ファミリーセーリングや時にレースも楽しみながらです。主軸はレースでは無いという事です。どんなに速いデイセーラーでもです。

レースでも無いのに、何故、あんな超ハイパフォーマンスを狙うのか?ハイテクの造りで、スクウェアートップのメインで、云々。それは、レースで無くても、速い方が面白いから。スポーツとはそういうものです。レースも楽しむだろうが、それが全てでは無い。もっと、気軽にセーリングを楽しみたい。でも、そのパフォーマンスにおいては、遅いのはやっぱり面白くない。そういう事のようです。だからデイセーラーなのであります。

昔みたいにしょっちゅうレースというわけでは無く、普段はシングルハンド、ファミリーピクニック、そして、たまに、友人達と3人ぐらいでレースにも参加している。そういう使い方のようです。主軸はレースでは無く、セーリングにある。

ちゃんとしたレーサーをシングルでちゃんと走らせるのは難しい。でも、デイセーラーならハイパフォーマンスをひとりで操船できる。それが大きな違いです。普段の事も考えたら、レーサーでは無理がある。それにレースでもかなり戦える。

という事で、デイセーラーは、セーリングそのものを楽しむのが目的にデザインされたヨットです。クルージングしても良いし、クルーを集めてレースをしても良い。でも、気軽にハイパフォーマンスをシングルでこなすことができる。それがデイセーラーの価値なのです。速いから即レースを思い浮かべる時代では無くなってきたという事です。フェラーリが速いと言っても、みんなレースしているわけではありませんから。ヨットもやっと車の世界のようなスポーツ文化の定着が進んできたかな? 
日本では、速いはレースというイメージが強い。でも、レースしても良いが、しなくても良い。速いは面白いのひとつとして捉えられるようになればと思います。

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