第十八話 風速に対応する

まずは、その時の風速に対応するセール面積について考えます。これはセール面積/排水量比の値を上げたり下げたりする事になります。これがまず一番目の対応になると思います。微風だったら、ジブとメインでもそこそこ満足できるなら良いのですが、もう少しというなら、セール面積を増やす事を考えますし、強風だったら、リーフして面積を減らす事になります。

二番目の対応は、その風速におけるセールの形を考える事になります。弱い風なら、カーブを大きくして、逆なら、カーブを小さくフラットにする。常識的な話です。でも、どの程度の調整が適切であるかを見極めるのは非常に難しい。これは経験を積みながら、自分で構築していく必要があります。それがセーリングを堪能する事そのものかもしれません。

セールのリーチを開いたり閉じたり、これはブームの高さ調整で行われます。ブームが下がれば、当然リーチにテンションがかかってリーチは閉じる。ブームが上がれば、リーチは開いてツウィストは大きくなる。ツウィストが大きくなれば、そこから風が逃げて、パワーを減じる事ができる。

要は、セールに大きくカーブを持たせたり、フラットにしたり、そしてツウィスト量を小さくしたり大きくしたり。その時の風速に応じて、これらのセールの形を造り出す事で、セーリングにおいてスピードが上がったり、動きの妙を感じたり、操作している面白さを感じたりします。

さらに、セールをフラットにするのは、バックステーアジャスターとアウトホール。深くするには、その操作の逆をすれば良い事になります。ただ、バックステーアジャスターを引きますと、セールはフラットになっていきますが、それはセールのマスト側、つまりラフ側から浅くなっていきます。という事はドラフトが後退する事になり、それは揚力の作用方向が後ろ側に行く事になり、それはヒールさせる力となりますので、揚力作用を前側に持っていきたいので、つまり、後退したドラフトを前側に移動させたいので、カニンガムでその操作をします。

ツウイストは、ブームの上下なので、バングを締めるとか、緩めるとか、シートを出せばブームは上がる。シート操作の場合は、セール角度も同時に変わりますから、バングで操作か、又はトラベラーで操作。これらの組み合わせを考えて、何をどうすれば良いか?

要はセールの形というのは、ドラフトの深さとその位置、そしてツウィスト量という事になります。その調整量が如何程か? これはとっても難しい事なので、まずは、操作によって変わる事、自由に変える事ができる事が先決で、それに慣れたら、その調整量について探索する。調整の仕方自体はそう難しいものでは無いが、調整幅はなかなか手強いかもしれません。でも、その探索こそが遊びだろうと思います。

風向に対するセールの角度、風速に対するセールの形、これらを目的意識を持って、操作をするなら、徐々に経験と共に洗練されていきますから、きちんと理屈で考えて操作した方が良い。その方がより上手くなる近道だろうと思います。

そして、全てが統合されて、形と角度を総合的に考えていきます。もうかなり慣れていますから、注意力がいろんな処に及んで、今迄気つかなかった事にも、どんどん気づく事が多くなると思います。それがベテランですね。ベテランの方々が上手いのも当然ですが、その前に、いろんな事に気づきます。だから、それに対応できる。気づかない事には対応もできません。

たまに、そんな微妙な、わずかな調整なんか面倒という方もおられますが、これは変化に気づいているかどうかであって、調整幅が大きいか小さいかの問題では無く、違いに気づくかどうかであって、気づけば、調整する。気づかないから調整のしようが無い。ただ、それだけだろうと思います。上手くなれば気づく、気づけば調整したくなる。それだけです。そして、調整して変化が解って、ベターになるなら面白いわけです。という事は、知識も増やし、腕も上げ、そして感知能力も上げる。この三つが同時に進化していきます。腕は良いのに感知能力が劣るなんて有り得ないと思います。感知できるから腕も上がる。その背景には、知識も増える。みんな同時進行だろうと思います。

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