第九十話 デイセーラーのセーリング

デイセーラーにはセルフタッキングジブとそれをカバーする大き目のメインセールという組み合わせが一般的です。このセルフタッキングジブはタッキングが簡単であるというだけでは無く、そのセーリングにも特徴があります。

ジブがメインセールに対してオーバーラップしていない。という事で、通常のオーバーラップジェノアに比べて、より内側にセールを引き込む事ができます。ヨットの走る方向を決めるのは舵です。舵で上っていきますとそれに合わせてセールも内側に引き込む事になります。一般的なヨットでは、サイドステーがありますので、それ以上内側に引き込む事はできません。だから、舵でもっと上りをつめても、セールが引き込めない以上、揚力が発生しなくなりますから、それ以上、上れ無い事になりますが、ノンオーバーラップでは、もっと引き込めますので、舵操作で上らせる事ができます。
つまり、上り角度は一般ヨットより良い。

しかし、欠点は、走る角度を落としていきますと、ジブシートのリード位置が調整できないので、ジブセールの効率は悪くなります。しかし、ジェノアでも角度を落とすと効率は悪くなりますが、シートのリード位置の調整ができるので、ましではあります。しかし、それにしても、ジェノアは上り用セール、効率が悪くなったら、ジェネカーとかを展開する前提があります。それで、ジブブームを持つヨットでは、これを解消し、角度を落としてでも、ジブが有効に働く。これは画期的な発明かと思います。

さて、ノンオーバーラップのもうひとつの事実は、ノンオーバーラップであるが故のセーリングです。上りではセールを引き込んでいます。一般的なジェノアですと、風がジェノアに当たって、その風が
メインセールの風下側に流れていきます。風はジェノアで曲げられて、メインに当たる。という事は上りでは、風がきれいに流れる様にメインを引き込まないといけません。

しかし、揚力の作用を考える時、セールはできるだけ外側に出した方が、揚力の作用が前側に移動するので、その方が速いという事になります。つまり、セールは出来る範囲で外側に出した方が良いという事になります。しかし、メインはジェノアが曲げた風によってその分出せなくなる。

しかし、ノンオーバーラップのジブの場合、その影響が少ないので、メインセールはもう少し出す事ができます。セール上部側はジェノアの影響は受けません。セール上部側の開く具合を変えずに、メインシートのテンションを一般ヨットより強くして、トラベラーでメインセールを少し落として、セールが発生する揚力を前向きにする。

揚力の事実は、セールをできるだけ外側に出して、揚力の作用を前向きにする。これを前提に考えると、上りでもできるだけ出した方が良い。揚力が発生する限りですが。走る角度を決定するのは、舵であって、セールでは無い。舵で上って、そのコースで揚力が発生する限り上らせる事ができます。たまに、ジブ無しだと上り角度は悪くなると聞きますが、あれは本当だろうか? 舵で角度を決めて、メインに揚力が発生すれば、上れるのではないか?これは確かめる必要があります。

小さなジブに大きなメイン。この事実は、メインセールを中心に、ジブはそこそこでも、メインをいろいろ調整して遊ぶ。メインの影響力が大きいのですから。

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