第四十九話 ヨット離れ?

最近聞き及んだ情報によりますと、ヨット離れが進んでいるのではないかという事です。元々、パワーボートの方が圧倒的に多かったわけですが、最近では、ヨットからの引退とか、ヨットからパワーボートへの移行とか、そういう現象が見られるとの事でした。

その理由のひとつが世界的にオーナーの高齢化が進んでいる事だそうで、もうヨットはしんどいのかな? そう言えば、最近のヨットはボリュームとしては非常にでかいんですが、快適キャビンは良いとしても、でか過ぎて、どうも気軽に乗れないのではなかろうか?

そんな事は造船所は百も承知で、だから、メインセールもファーラーにするし、ウィンチも電動にする。おまけにバウスラスターや、最近ではスターンスラスターまで設置して横歩きできるようなヨットまで出してきた。だったら、簡単じゃないか? ボタンひとつで全部操作できるじゃないか。

ところが、そうは行かない。あのでっかいボリュームのヨットを、気楽に出せなくなってきたのではないか? いくら理屈では簡単だとは言っても、あのでかさにプレッシャーを感じないか? おまけにクルー不足もある。そんな事が、ヨット離れを引き起こしていないか?

アメリカのある老舗の造船所、元々はヨットの造船所でしたが、十数年ぐらい前からパワーボートも建造し始めた。ところが、最近、ヨット建造の休止を発表しています。パワーボートに力を入れていくらしい。さすがに、ヨットの造船所だったので、ヨットはもう造らないとは言わないものの、取り敢えず休止だそうです。

また、あるヨーロッパの大手造船所は、ヨットの売上よりも、パワーボートの売上の方が格段に上がってきたそうです。ここも、元々はヨット専門の造船所でした。さすがにヨットやめるとは言ってはいませんが。

何故に、こうもヨットはパワーボートに負けるのか? あの快適なキャビン、オートマチック的装置まで設置して、誰でも簡単に操作できるはずなのに。何故、ボートに移行するのか?

簡単な話、ヨットがヨットである理由はセーリングにある。セーリングを重視しないなら、ボートの方が、宴会するにも、寝泊りするにも、クルージングに行くにも、遥かに便利だし、簡単だからじゃないか? つまりは、セーリングをしなくなったのではないか? 少なくとも、セーリングを重視して、セーリングでなければならないという理由が薄くなっていったのではなかろうか?

ところが、一方で、世界には、デイセーラーを導入してくる造船所がポツポツ増えてきています。これは何を意味するか? 多分、パワーボートは嫌だ、エンジンはうるさいし、でも、クルーは居ないし、セーリングを気軽に味わいたい。 まだまだ、現役で居たいという人達も居るのだろうと思います。

もしそうなら、これからは、セーリングをいかに取り戻すか? ここにかかってこないだろうか? 
気軽に、シングルでセーリング操作を味わうことができる。それって、ヨットにとって非常に重要なのではなかろうか? でも、でか過ぎるヨットは、どうも気軽になれないのではなかろうか? キャビンの広さが欲しかったら、全長を伸ばして確保する方が健全なのではなかろうか? ヨットはやっぱり、セーリングしてはじめてヨットで居られる。

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