第四十一話 旅好き

先頃、九州にクルーズトレーンなる豪華列車が登場しました。予約が殺到し、抽選、来年の6月迄
完売だそうです。決して安くは無い旅ですが、みんな旅が好きなんですね。



皆さん旅好きですから、ヨットだって一番にクルージングを考えます。ヨットであっちこっち旅をして回りたい。旅はあこがれ、夢でもあります。

ただ、列車で行くなら、おもてなしを受ける側ですから、楽しむだけで良い。後は全部相手が接待してくれます。こんな豪華なクルーズトレーンで行く旅なら、楽しいに違い無い。豪華な列車に、プロの接待、そしてご馳走を堪能できます。何も煩わしい事も心配も無用、ただ楽しめば良い。

しかし、自分で企画して行くとなると、話は違います。それでも、車で旅行するならまだ簡単です。日本中に舗装道路が整備され、宿泊にしても、食事にしても、観光スポットにしても、情報を事前に入手できます。何ら問題はありません。ところが、ヨットで行くとなると、そう簡単には行きません。特に天候は重要ですし、長期になると時化への遭遇は避けられないと見るべきでしょう。道路も無いし、あっちこっち停泊場所が整備されているわけでも無い。

ヨットの旅は冒険でもあります。だからこそ面白いという方もおられるし、二の足を踏む方も当然おられます。夜走るのは避けたい。そうなりますと、ホームポートを朝出て、夕方迄にはどこかのマリーナに入りたい。そうなるとエンジンで走ります。セーリングでは時間の計算ができない。また、その範囲内にマリーナがある事が条件となって、あっちこっちにあれば良いのですが、そうでも無ければ行き先はいつも同じ場所になりかねない。同じ場所となると、そうしょっちゅう行っても面白さが無くなる。結局、置かれた環境にも寄りますが、そう簡単にはあっちこっち行けない。

もちろん、漁港に泊めたり、夜間航行を厭わない方はその限りではありませんが、そう多くは無いのではなかろうか?そうなると、なかなか気軽にクルージングとは行きません。そういう方々も少なくないのではなかろうか? 列車の旅に比べると、遥かに冒険性が高いのです。燃料だってどこで給油するかと考えておかなければ。

ヨットはいずれにしろ冒険性があります。その冒険を旅でするのか、デイセーリングでするのかの違いです。だから、いっその事、旅は列車や車を手段として楽しみ、ヨットはセーリングを楽しむと割り切ったらどうだろう? 何をぬかすという方もおられるかとは思いますが、でも、そう割り切ってしまえば、旅もセーリングも、どちらも気軽に堪能する事ができるようになります。合理的な割り切りができると、それだけより多くを楽しむ事ができると思います。

ヨットでの船旅は、もちろん、列車や車の旅とは違う味わいがあります。しかし、冒険性は高い、遠くへ行けば行く程、知らない場所へ行く程、簡単では無い。その冒険を楽しめるなら良いのですが、それはそれとして、もっと気軽に楽しめる方法で、旅は列車や車を使うと割り切って、セーリングを冒険するという方法もあります。そう考えれば、両方のエッセンスがより楽しめるのではなかろうか?

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