第三十九話 スプレー

デイセーラーはフリーボードが低いので、多くの方々がスプレーを浴びやすいのでは?と思われるかもしれません。実際、そういう質問を受ける事もあります。しかし、問題はフリーボードの高さではありません。もちろん、本船みたいに、ものすごく高いなら別でしょうが、数十センチの差で、スプレーを多く浴びるなんて事はありません。それより、問題は船型にあります。

       

波に叩いた時、船型によって、より多く、より高くスプレーを上げる事になります。それがコクピットに飛んできます。よって、より波を上げる量が少なく、しかも高く上がらない船型なら、スプレーを浴びる量も少なくなる。スピードにも寄りますが。

船底が鋭角なら波に当たって飛沫を上げる量は少なくなります。波あたりも柔らかい。外洋艇なんかはそういう船型です。水線長もバウにオーバーハングがありますと、エントリー部分が後退して、ハルの先端では無く、少し幅の広い部分になります。波は船体に沿って、上に上がってきますから、レーサーの様なフラットでオーバーハングが無いような船型の方がスプレーは浴びやすいと思います。デッキの高さの問題ではありません。

ただ、クルージングで何時間も乗る場合はスプレーは避けたい。ですから多くの方々がコクピットにドジャーを設置されます。でも、レースやデイセーリングにおいては、短い時間である事や視界、それにスポーツという事を考えますと、多少のスプレーは浴びても構わないとは考えられないでしょうか?もちろん、寒い時は嫌なんですが。

海に出て、強風で、スポーツで、濡れるのは当たり前と思えないでしょうか? 何にでも対策をしてしまうのは良い事なんですが、その為に、ドジャーを設置し、ビミニトップを設置しと考えますが、でも、ちょっと開き直って、濡れるのは当たり前、夏に暑いのは当たり前、雨が降ったら濡れるのは当たり前とちょっとでも思えると、実に気楽になれます。場合によっては面白くも感じます。子供の
頃、雨にわざと濡れて遊んだ感じかもしれません。

先日の強風、スプレーを何度か浴びました。でも、開き直ってしまえば、どおって事は無い。濡れても、そのうち乾きます。それよりドジャーが無いから視界は良い。操作もしやすい。濡れても良い格好をしておけば良い。そうは考えられないでしょうか?

クルージング艇にはドジャーは必需品かもしれません。でも、スポーツセーリングには無い方がむしろ良いと思っています。そして、スプレーはフリーボードの高さでは無く船型の問題です。

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