第百話 セールの枚数

セールは何枚必要なのか? 基本はジブとメインの2枚ですが、ジブは基本的には上り用のセールです。それ以外の角度において使えない事はありませんが、上り以外は実に効率が悪くなります。また、風が弱いと殆ど使い物になりません。そして、下りでは見かけの風は弱まるわけですから、そういう状況になりやすいという事になります。つまり、微軽風と下りコースをどう対応するかになると思います。

一方、メインセールはあらゆる角度で使えます。それはブームがある為で、ブームのアウトホールがセールのクリューを引き、ブームを引きこもうが、押し出そうが、セールは開いてくれます。そこで、ジブブームが開発されました。ジブブームはメインと同じように、あらゆる角度で使う事ができます。

しかし、このジブブームが無いヨットでは、やはり、ジブとメイン以外にセールを揃えたい。それは微風時と下りのコースです。微風時では、セールが重いとその重さに負けて、セールがだらりと下がってしまいます。推進力を得る為には、セールが風を孕んで開く必要があります。だらりと下がったセールは揚力を生みません。

ある程度の風がある時、その重いジブでもセールを開いてくれて、尚、下りコースでも使えない事はありませんが、でも、非常に効率が悪い。よって、微軽風用のセールや下り用のセールがありますと、あらゆる角度で、微軽風から強風までをカバーする事ができるようになります。

まず考えられるのはジェネカーです。ジェネカーは一般的にはクルージング用の下り用セールです。ハイパフォーマンスを狙うレーサーが使うセールはこれと分けて、非対称スピンと呼んでます。
このジェネカー、もちろん下り用ですが、セールを引き込めば70度〜80度ぐらいまでは上る事ができます。しかし、上り用ジブセールとこのジェネカーの間をどうするか?という事で、コードゼロというセールがあります。

コードゼロは上り用です。しかし、ジブセール程角度を詰めるのでは無く、ジェネカーとの間を埋めるセールです。従って、パフォーマンス重視という事であれば、ジブとメインに加えて、ジェネカーとコードゼロの計4枚という事になります。しかし、シングルハンドでそこまでやるか? そういう問題になります。それで、コードゼロとジェネカーをミックスしたセールを一枚と考えます

コードゼロのような上りに使えて、尚、ジェネカーのように下りにも使えるセール。これをファーリングにして、出航前にセットしておきます。そして、出たら、状況に応じてジブとの使い分けをします。
生地はスピン生地の軽いセールで、軽いですから微軽風にもふわりと開きます。ラフをジブと同じように直線にして、ドラフトは浅めです。こうする事によって、より上りに使えます。但し、スピン生地ですから、強風においては生地が伸びてしまう可能性がありますから、あくまで微軽風用。上りを強調したい場合は、生地を厚めのスピン生地にする方法もあります。しかし、この場合のデメリットは重くなる事で、微風では重さの為に開かなくなる事も考えられます。これは良い悪いの話では無く、考え方の違いです。基本的には、微軽風用として0.75オンスで良いかなと思います。上り強調なら、1.2とか1.5オンスとかも考えられますが。風の強さ次第です。

また、下りになりますと見かけの風が弱まります。それでセールは軽い方が良いわけで、それでスピン生地を使うわけですが、上り兼用ですから、ドラフトは浅め、しかもラフは直線ですからパフォーマンスは落ちます。このセールはジェネカー程には下れないし、コードゼロ程強い風には対応しかねる。しかし、レースをする前提で無い限り、個人がシングルでセーリングを楽しみ、走れる角度を拡大して、しかも、操作の容易性を含めた全体的に考えますと、良いセール、使えるセールだと思います。強い風なら、ジブを使えば良いわけです。

ジブブームを持つヨットにしても、これだけであらゆる角度を走れるわけですが、微軽風におけるセーリングはやはりセール面積の大きなこういうセールにはかないません。ですから、そういうヨットにも御勧めです。ある程度風がある時はジブとメインで充分、風が弱い時は、こういうセールを使うというように使い分ける事ができます。

或は、下りを強調したい時は通常のジェネカーでも良いし、非対称スピンでも良いわけで、これは乗り方次第、考え方次第です。下り重視か或はオールラウンドを求めるかです。ただ、シングルですとファーリングにしたい。ファーリングにする為には、ジブファーラーのドラムより前側に少なくとも30cm以上は出したい。そうしなければ干渉してしまいます。という事で、どうしてもバウポールが必要になってきます。或は、ヨットによっては、ジブが先端から少し後方側からフォアステーが出ているヨットもあり、そういうヨットではバウポールは不要ですが。

バウポールは最近では、かなりの造船所が供給するようになってきました。第三のセールをお考えなら、是非、バウポールの設置を含めて考えてほしいと思います。また、セルデン社から出ている、後付けのバウポールを設置する事もできます。

いろんな考え方があるとおもいますが、結論的には、いろんな要素を考慮して、こういう第三のセールを持つ事はおおいに意味がありますので、セールの枚数は3枚と考えます。

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