第九話 上質のセールフィーリング

上手くなってどうするの? 速く走ってどうするの? その答えは、私なら、全てはグッドフィーリングを得る為だと答えます。あらゆるセーリングの究極の目的は、これしか無いと思っています。それを得たからと言って、どおって事は無いかもしれない。しかし、少なくとも、気持ち良さを味わえる。
生きてる限り何かを味わい、やがては去って行く。 飯だったら、上手いもの食べたいし、服だったら、格好良いのを着たいし、女性にだってもてたい。みんなグッドフィーリングの為。

但し、グッドと言ってもいろいろあります。うまいもの食べたいと言っても、いつもご馳走ばかりじゃ飽きもする。服だって、同じじゃ無くて、バリエーションがあった方が良い。女性にもてると言っても、時にはひとりになりたい時もある。要は、いろいろ味わいたいわけであります。ゆったり寛ぐのは良いが、退屈は嫌。だから、退屈感以外の、何らかのフィーリング、しかも、いろんなフィーリングを味わいたい。

そして、どうせ味わうのだったら、できるだけグッドなフィーリングを味わえるようにしたいというのは当然の事だろうと思います。その為にうまくなれたら、上手ければ上手い程、時に応じて、状況に応じて、また自分の気分に応じて、いろいろバリエーションが持てる。つまり、いろいろなグッドフィーリングを味わえるという事になります。何を味わうか? 何を味わえるようにするか?要はそこではないかと思います。

グッドフィーリングはひとつでは無く、いろんなグッドがあるわけですが、繊細な事から大胆さまで、
自分が面白いと感じる事をいろいろ探っていく。その為にも、上手い方が良い。そして、上手い方が質を上げる事もできる。

量より質、若い時は大飯ぐらいだったかもしれないが、年取りますとたくさんは食えないので、少なくても質の良いものの方が有難い。最近では、例のジョイスティックの御蔭か、でかいヨットが売れているらしい。でっかいヨットはそれはそれで良いとしても、余程遠くにでも行かない限り、あまり必要では無いような気もしないではありません。それより少しサイズダウンしてでも質を問いたいと思います。走れば良い、簡単なら良い、便利なら良い、快適なら良い、そういうのも有りなんでしょうが、滑らかな走りが良い、レスポンスが高い(高すぎない)のが良い、舵操作のフィーリングが良い、バランスが良いのが良い、速い(速すぎない)のが良い、操作しないより操作して、操作感が良いのが良い、操作が面白いのが良い云々。

ある方、操作するのが面白いと言われます。吹いたり、吹かなかったり、ブローが来たり、いろいろあるわけですが、それに対して、いろいろ操作をされる。その行為があるから面白い。どこまでやるかはそれぞれでしょうが、少なくとも、操作するからスポーツになって、体は動かすし、頭も使う。
今度はこうしてみよう、ああしてみようと考えるのも面白い。これはアンチエージングに最高だと言われる。

これはただ走っているのとは違います。ああだこうだはスポーツですし、それは同時に質を問う事になります。より上質のセーリングを目指して、その結果、グッドフィーリングを得ていくんだろうと思います。セールについたリボンの流れを見つめて、セールを出したり、引いたり、考えたり、集中力も必要ですし、変化を感じ取る感知能力も必要です。

時に応じて、気分に応じて、臨機応変に対応できるように。それには上質セーリングを目指して、上手くなっていかないとできる事ではありません。上手ければこそ、速くも走れて、のんびりも走れて、ゲストが来ても自由自在で、しかも自分のペースで。何と自由なんでしょう。それが面白く無いはずが無いと思います。実は、うまいだけでは無く、うまくなろうとする時が面白いんだろうと思います。

次へ       目次へ