第77話 外洋ヨット

ヨットの醍醐味は日常のデイセーリングだけではありません。デイセーリングをずっとお奨め
してきましたので、ここらで外洋ヨットについても、書いておこうと思います。私は決して、大型
艇を否定するものではありません。ただ、自分が自由になる時間を考えた場合、現役で仕事
をされている方々にとっては、なかなか外洋に行く時間が取れないのが一般的で、それなら
引退するまではデイセーリングを気軽に楽しまれたらどうかと言っています。

現役を引退された方、或いは、現役でも時間が取れる方、クルーが居て、奥さんでも結構、
自由に遊べる方は大きなヨットを望まれます。外洋ヨットというのは、大きければ外洋艇かと
言うと、そうではありません。外洋というのは、長く走れば時化に合う事も想定しなければな
りません。そういう中で、安全に航海できる事が望まれます。

船体の頑丈さは当然の事、重心の低さ、スタビリティーの高さ、収納容量等々が必要になって
きます。コクピットの広さについても、あまり広いのは考えものです。適度に狭く、深いのが安心
です。本物の外洋艇は、本当に良いヨットは長く乗っても疲れ方が違ってきます。

例え、外洋に行かないにしても、こういうヨットは故障率が低いですね。歪が来ない。ですから、
長く乗れます。20年や30年、どおってことは無いのです。ある造船所は100年を目指すと豪語
していました。100年後に見ても、きれいなヨットを造るそうです。

昔は小さくても頑丈なヨットはありました。ですからそれをレストアの対象にしたわけですが、残念
ながら、昔のことですので、数がでていません。ただ、昔と違って、小型艇で外洋に行く人は冒険
家でも無い限り、出て行きません。従って、外洋艇は、今では、ある程度のサイズ以上になってき
ました。

例えば、当社取り扱いのセーバーですが、最低38フィートからです。他社も同じようなものでしょう。
船体の素材はポリエステルでは無く、ビニルエステルを使う事が多いです。それにセーバー社では
全ての船体に接する内装の家具類も船底にラミネートされています。電気配線は電蝕防止の為に
メッキされ、つまり、見えないところにかなりの職人の手が入っています。これらが、船の寿命を大幅
に伸ばす事になります。それにトラブルも少ない。

つまり、外洋艇は外洋に安全に行けるというだけで無く、寿命も長いし、トラブルも少ない。こういう事
になります。それで良い事ばかりかと言うと、その分金額が高い。つまり、価格は品質を反映します。
同じサイズでも、ロングを走ると、しっかり造られたヨットの方が疲れにくいんですね。慣れてくれば
見ただけで違いが何となく感じられます。

スワンには縁があり、私も長い間クルーをしています。やはり高いだけあって、隅々までしっかり造られ
ています。まあ、皆さんのあこがれのヨットだと思いますが、乗ると解りますが、これは確かに良い。
へたな新艇買うより、こういう良いヨットの中古を買う方が絶対に良い。そう思います。御予算がある方
は是非、どうぞ。

本当は、予算がある方には良いヨットを買って頂いて、将来買い換えなどをされると、この良いヨットが
中古として出ますから、価格が下がったところで、他の方々も買えるようになる。こういうのが理想的
ですね。ところが、日本の方々は遠慮深いと言いますか、つつましいといいますか、予算がある方でも
安いヨットにされる傾向にあります。それで、なかなか良いヨットが日本には入らないんですね。残念
ながら。でも、これも先々変わっていくでしょう。安い物を頻繁に買いかえるより、本当に良い物を長く
乗る。そういう傾向になっていくと思っています。

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