第76話 セーリング優先

何週間もかけて外洋に行くなら、居住性は大切ですから、外洋ヨットには、そういうものも
要求されます。他にも、頑丈さとか、直進性とか、安定性、安全性、そういうものが必要
です。でも、そうで無いなら、デイセーリングから、沿岸のショートセーリング主体なら、セ
ーリングが楽しいヨットで、セーリングを楽しむのが良いと考えています。

キャビン、キャビンと皆さん求められますが、どれだけの方々が有効利用されているでしょ
うか。雨なら乗らない。天気が良い時はコクピットで過ごす。別荘代わりに使わない限り、
キャビンはそう重要視しなくても良いと思うのですが、いかがでしょうか。ところが、最近の
ヨットの傾向はますます、大きなキャビンに向かっています。キャビンが大きくなると、重く
なります。それでバラスト重量を減らす。スタビリティーは幅の広さでカバーすると言われ
ますが、これがどれだけカバーしているのかは解りません。そして、セールエリアも小さく
なってきている。

きっと欧米人はキャビンを求めているのでしょう。彼らの休みは長く、キャビンを有効利用
できる状況にある。それは乗らない時でも、別荘代わりにキャビンに住まうからです。

本当に重心の低いヨットに乗ってみると、これが実に面白い。キャビンを大きくする度に
重心は高くなる。キャビン不要とは言いません。ただ、たいそうに寛ぐ程のキャビンは、無く
ても良い。ロングを走らない限り、そんなに大きなキャビンである必要は無いと思うのです。
それより、低い重心にしてもらいたいし、バラスト比を上げてもらいたい。その方が、安心
して、セーリングを堪能できるからです。

そんな事から、アレリオンやノルディックフォーク、GHなどを見つけました。みんなキャビンは
小さい。でも、充分、雨がしのげて、ちょっとお茶が楽しめる。船中泊でも、ショートクルージン
グならできます。たいそうなギャレーは無いし、温水も出ない。でも、気軽に出せて、セーリン
グが面白い。人生の全てをかけて、ヨットに乗ろうなんて事じゃないんですから、もっと気軽
に考えて、面白いスポーツカーを買うようなつもりで、走りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
今の何倍も面白くなると思うのですが。車なら、皆さん、ちょっと余裕のある方は気軽にスポー
ツカーを楽しまれる。そのスポーツカーに全てを求め様とはなさらない。だから、楽しめるのです。
スポーツカーに5人乗りを求めれば、スポーツカーとしての醍醐味が少し削られる。だから、そん
な事は求めない。5人乗りのセダンは別にある。ヨットは2艇所有する事はできませんが、セダン
である必要性など全く無い。

したい事、しなければならない事は山ほどある。仕事、家に帰る、食事して、寝る。子供の事、
テレビだって見るし、新聞だって読む。たまに付合いで飲みにも行けば、ゴルフもあるし、近所と
の付合いもある。かみさんにも付き合って、旅行に連れていったり、ぐちも聞いてやらなければ
ならない。釣りにも行きたいし、テニスもしたい。映画だって見たいし、健康を気にしてジョギング
したり、犬の散歩や、家の手入れ。たくさんのやりたい事とやらねばならない事がある。その中
のひとつとして、ヨットがあるんです。 ヨットに全てを求める必要がどこにあるでしょうか。人生を
全てヨットにかけようなんて気持ちがあるなら別ですが、ヨットは一部なんです。それなら、ヨット
のエッセンスをズバッと楽しんでいかがでしょうか。

次へ          目次へ