第64話 中古ヨットが足りない

バブルがはじけて長い年月が経ちました。その間、新艇ヨットの進水が実に少なくなりました。
という事は当然、出てくる中古艇が少ないという事になります。反面、本来なら新艇でも、と考
える方々が、この不況ですから中古にしておこうかと考えられる。つまり、中古市場における
需要は大きく、供給が少ない。こういう状況が続いています。それで年数を数え、中古市場の
ヨットは古い物ばかり、オーナーも自分のヨットがかなり古くなってきた。そこで買い換えを検討
するも、比較的船齢が新しい物が見つからない。やはり、新艇が動かなければ、うまく循環し
ないのです。

ようやく世間は少し経済の上向き状態に、新艇の動きが出てきました。新艇ヨットが売れてマリン
業界が活況を呈すれば、日本経済は好景気の証拠でしょう。どんなに中古艇が売れても、その
ヨットは場所を移動したに過ぎません。でも新艇がひとつ入るという事は、日本にヨットがひとつ
増えたという事ですから、これはおおいに貢献しています。これからは、新艇をもっともっと増やして
置き場も、漁港とのフィッシャリーナを推進して、ヨットを身近に、より多くの方々が気軽にヨット遊び
を楽しめる、そういう時代になればと思います。日本は海に囲まれながら、あまりにも海を遠くに
追いやってきた感があります。

海は漁業の働く場としての認識が強いのか、せいぜい海水浴程度が庶民の遊びでした。それに、
海をあまりにも危険視し過ぎるきらいもあります。でも、釣り好きの方々は釣りがこうじて、ボートを
買う。釣りボートは実に多いのです。という事は危険だから増えないという事では無いですね。釣り
が好きで好きでという方々は釣りの目的の為にボートを購入されます。好きが危険を超えた。
ヨットは少ない。という事は何かがヨットの数を増やす事を妨げています。危険性では無い。釣りは
目的が明確です。この目的の明確さ、それを実現したいという希望がボートを増やす。危険性で
言えば、ヨットよりボートの方が危険性は高いでしょう。この明確な目的というのが大切です。

ヨットに乗る為の明確な目的があれば、ヨットは増えてくる。その明確さが無く、あいまいなのです。
何の目的でヨットに乗るか?これが解らないから増えないのではないでしょうか。ヨットは難しいと
いう話を聞きます。難しいから増えない?これも一因ではあるかもしれませんが、最大要因では無い
と思います。要は目的です。ヨットに乗るとどんな良い事があるのか。これさえ明確であれば、ヨット
は自然に増えてくる。

どんな良い事があるかと言っても、釣りのように行為としての明確さはあまり無い。あるとしても、あの
向こうの島に渡れるとか、船旅とか、まだこれでもあいまいです。釣りは岸壁で始めて、醍醐味を既に
体験済みです。ですからその醍醐味を体験している。これほど明確さは無い。ところがヨットは体験
が少ない。想像のみです。おまけに、ロープやら何やら一杯あって難しそうだし。

ヨットに乗るとこんな良い事ありますよ、と明確に解るようにしなければ増えていかないのではないで
しょうか。それには体験が必要です。どうか、皆さん、一人でも多くの方をヨットに乗せてあげて下さい。
それでも、体験が素晴らしいと良いのですが、時化てると逆効果。釣りの場合は時化てても、釣りという
明確な目的があり、醍醐味も解っているので、それ程離れる事は無い。でも、ヨットは違います。目的が
不明確ですから、最高のコンディションに最高のフィーリングを一度体験しないことには解らない。どうか、
最高のコンディションを選んで、載せてあげてください。

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