第33話 休みが少ない

日本人は休みが少ないのです。実際に1年間の休日日数を数えますと、本当はかなり
あります。でも、感覚的に休みが少ないと感じます。つまり、欧米のように長期休暇が
なかなか取れず、ちょこちょこと祝日をはさみながら休むもんですから、しかも、国民の
休日は全国休みですから、どこ行っても混雑ばかり。どうも休んだ気がしない。それに、
仕事は美徳、休みは悪とまでは言わないものの、どうも長期をどうどうと取れる習慣が
ありません。だから、休みが少ないと感じてしまいます。例えば、祝日というものが全く
無くなったとしても、1年に1回、3週間とか連続して休める、それもどうどうと休めるとし
たら、これは多いに休んだ気になるでしょう。欧米とは習慣が違いますから、これをとや
かく言っても仕方がありません。日本人は日本人らしく、楽しむ方法を取れば良い。

こうやって、飛び飛びの休みがある国ですから、遊びも飛び飛びです。連続して、1週間
あるとしても、クルージングに丸々1週間を予定すると、時化やなにかで帰れない事もあ
る。そうすると、周の内3日か4日ぐらいをあてる。つまり、往復を考えるとその半分で行
ける距離という事になるでしょうか。もちろん、行った先のマリーナにおいて一旦帰るとい
う手もありますが、後で取りに行くのも面倒です。

仕事をしていると、どうしてもこういうスケジュールにならざるを得ないのです。ですから、
行ける範囲も限られてくる。旅は目的地に着いてからの楽しみの方がどうしても重要視
されがちです。それなら、モーターボートの方が足が速い。そういう結論にならざるを得な
い。それでも、ヨットの持つ魅力は大きいんですね。

それで、休みが無いなら、ないなりに、ヨット遊びを満喫する方法を考える。何度も言って
いますが、それはセーリングを楽しむ事です。セーリングしているだけで、面白いのです。
自分がその気になればですが。日帰りのデイセーリングから、1泊程度のセーリングを
日常として、或いは、午前だけとか、午後だけでも多いに結構じゃないですか、とにかく
頻繁にセーリングを楽しむという姿勢を持ってもらうと、楽しいセーリングができます。しょっ
ちゅう出ていますと、いろいろな事が体験できます。セーリングそのものの爽快感は当然
ですが、魚の群れで海面が浮き上がったり、鮫やイルカに出会うこともある。夜間に走れば
夜光虫が輝き、それは幻想的でもある。最高のコンディションに出会えれば、ヨットは何とも
形容のしがたい滑らかな走りを体験できます。沈む夕陽も決して同じではなく、時には息を
飲むような光景にも出会える。まだまだあります。こんな事が遠くへ行かなくても、目の前
で体験できるのです。それを逃す手は無い。

だから、気軽に出せるヨットをお奨めしています。仕事が忙しい現役の方々には、考えれば
いろいろああもしたい、こうもしたい、あそこも、ここへも行きたい、頭で考えると、どんどん
欲求が出てきます。それはそれでいい。でも、今できる事を多いに楽しむ事をお奨めします。
私は、そういう考え方ですから、アレリオンやノルディックフォークがすきなのです。もちろん、
不満もあるでしょう。でも、今は気軽に出せる、しかも乗って面白いヨットがすきなのです。
ヨットを乗りこなせるまで乗って、そして、引退したら、遠くへ行くのも良い。その時は、もうち
ょっと大きいヨットが良いかなと思います。お金に余裕がある方は、クルーが一人でも居れば
かなりの大型でもOK,その代わり、電動ウィンチとか、オートパイロットとか、そういうのが
ほしいですね。年とってきますと、楽に動かせるようにしておきたい。

それで、引退後はあっちこっち行くとしても、再び、最後にはデイセーリングに戻ってくる。遠く
へ行くのは、大時化にあったりもします。つらいこともある。体力が充実している時はそれでも
乗り越えて行く。でも、これを過ぎてくると、また、再び、ヨットの最も良い爽快な部分、エッセ
ンスだけを味わいたくなる。そしたら、再び、小型艇で、シングルハンドを満喫したくなる。最高
のセーリングを気軽に味わいたくなる。世界で小型艇が売れているのはこういう理由もあるの
ではと思います。この時は漂っているだけでも楽しいのです。

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