第九十話 常識?

時代は変わります。それと共に、我々の考え方も変わり、感覚さえも変わっていきます。昔はレーサーと言われたヨットが、今では、どこからどう見てもクルージング艇にしか見えないというヨットもあります。これは別に我々が、昔より体が大きくなったり、力が強くなったり、そういう事では無く、考え方や感覚が変わったせいです。それは、新しいレーサーが生まれた事で、それとの比較によるものと思われます。

つまり、昔の常識は今の常識とは違うという事になります。という事は今の常識は未来の非常識かもしれません。遠くない未来に、一般的なセーリングが、今日のレーサーの様なパフォーマンスを実現しているかもしれません。それをシングルで乗っているかもしれません。

今は感覚的にそういう速いヨットには、一般的には拒否反応があるだろうし、ましてシングルで乗る事は考えられないかもしれません。でも、未来はわかりませんね。

事実、私の周りの何人かは、シングルハンドで、ハイパフォーマンスを越えて、レーサー並のパフォーマンスを持つヨットにシングルで乗る事を検討されています。徐々にそういう方々が増えてきています。別に、レースだけを考えての事でもありません。速いのは面白いという感覚の持ち主です。今は、そういう方々は少数ですが、未来において、それが普通にならないとは言い切れません。
もし、そうなったら、それが普通のスピードという事にはなるでしょうが。

デイセーラーの一般的世界はハイパフォーマンスという処ですが、今日のデイセーラーが出てきて
20年以上になります。そうしますと、デイセーラーも進化を続けますから、もっと速いデイセーラーを造るという動きが当然ながら出てきます。それがDINAMICA940ですが、もちろん、まだ一般的ではありません。今は、デイセーラーでも、特殊な部類かもしれません。しかし、特に、ヨーロッパにおいては、そういうヨットがいくつも建造され始めました。

それらのデイセーラーは超ハイパフォーマンスと言えます。もちろんワンデザインのレースに使われる事も多いですが、それだけでは無く、日常はシングルハンド、ファミリーセーリングを楽しむという具合です。極力キャビンをシンプル化して軽く造る。キャビンに重点を置かなければ、こんなに速く走れますという事を示しています。それも、普段はシングルを可能にしている。

ただ、強風においては早めのリーフはなされる事になります。それで、リーフも簡単にできるようにします。セールはセルフタッキングか、或はノンオーバーラップジブの採用です。

スポーツカーにもいろいろあるように、ヨットでも同じです。デイセーラーはスポーツカーと同じです。すると、もっと速いスポーツカーが出てくるのと同じであります。まあ、当分は超ハイパフォーマンスが一般的になるとは思えませんが、でも、未来においては、もっと技術開発がなされて、微風にも強風にももっと強いヨットができるでしょう。その答えのひとつは既にありますキャンティングキールです。キール自体が左右にスウィングさせる事ができますので、高い安定性を得る事ができます。
これが一般化していくのか、或は、別の方法が取られていくのかは解りませんが、何かがあるでしょう。数十年後には、超ハイパフォーマンスを、いとも簡単に乗りこなす時代が来るかもしれません。その時、生きているかどうかは解りませんが、ちょっとその世界を覗いてみたいものですね。

次へ       目次へ