第二話 上りの探求

上りはセーリングにおいて、最もセーリングの醍醐味を味わえる走り方のひとつです。船体はヒールして傾くし、風は真の風よりも風に向かって走る分、より強く感じます。その上りというセーリングを、もっと探求していこうという話です。否、取り敢えず、上りというセーリングから始めてみようという話です。ただ何となく上るというのでは無く、ちゃんと上るという事をしてみようという話です。

上りでは、ジブもメインもできるだけ引き込みます。ジェノアはサイドステーに当たるぐらい、メインはブームが船体中央にきて、シートをいっぱい引き込みます。さらに、バックステーアジャスターも引いて、セールはフラットにして、セールを最も上る時の設定にします。

本来は、風の強さによってドラフトを調整したりするんですが、ここでは、そういう事は一切しないで、兎に角上れるいっぱいのセール調整で、いろいろ試す事をしてみます。

一旦セールをセットしたら、セールは操作しません。操作するのは舵のみです。風向が変わりますから、そのシフトした風向に追随して、兎に角舵を合わせて上ります。

ギリギリまで上る。舵をわずかに動かすと、ジブのリボンの風上側が斜め上に跳ね上がる。それ以上ちょっとでも上るとセールの裏に風がわずかに入り出す。そういうギリギリです。わずかに舵を戻すと、リボンが真横に流れる。そんな状態を繰り返しながら、シフトする風向に追随しながら、走ります。できれば、風向風速計とスピード計があれば、その時の見かけの風向風速、真の風向風速、それとスピードをチェックしておきます。

風が弱い時は、少し角度を落として、ドラフトも深くしていきますが、そんな事はお構いなしです。兎に角このセール設定で、いろんな風を走って、どういう走りになるかを体感していきます。知識として、風が弱い時はこう、強くなったらこう、というのがありますから、それをつい実行しますが、何となく、曖昧な調整になってしまうのではなかろうかと感じます。ですから、将来のセーリングの為にも、敢えて、セール調整はなしで、兎に角上りを探る。

強風になったら、ヒール角度がおおきくなります。25度程度ぐらいまでならOK.その時の風速は?スピードは? それがそのヨットの上りでの限度です。これ以上風が強くなったら、オーバーヒールとなって効率は良くないとされますから、風を逃がす事になります。でも、その前に、もうちょっとヒールしても我慢する。30度ぐらいヒールしても、ヨットは大丈夫です。ここは少し我慢して、本当に
25度を越えて、30度とかになると、効率は悪くなるのか? この際だから体感してみましょう。
もちろん、ブローが入って、もっと大きくヒールするようなら、シートでさっと風を逃がす事は考えておいた方が良いですが、そうでもなければ、兎に角、オーバーヒールも含めて、上りのセーリングを探求してみます。

風が弱い時でも、全く同じセールセットで、弱い風で最も上れる角度まで上ります。セールもフラットなまま、理論的は正しくないのですが、でも、ここはそれを試す事で、実際に体感してみようという事です。この時の状態も計器で確認します。兎に角、どんな風でも、出来うる限り上ってみる。
そんな事をやり続けますと、自分のヨットが、いろんな状況で走る状態というのがわかってきます。
微風で、セールが自重でだらしなく垂れて、どうにもならなくなる風速の弱さの限界も解ってくる。

計器を是非活用して頂きたいのですが、風速とスピードとヒール角度の関係を、何度も走って、どういう時にどういう走りをするのか、操作するのは、舵のみで、これで、上りを探るつもりで、自分のヨットの性能を知るつもりで、何度も走ってみる。

このメリットは、まず、風向が変わるのに対して、舵で追随していきますから、風の変化が良くわかるようになる。微風での上り角度の限界とスピード、強風での上り角度の限界とスピード、兎に角、上りに関して気づいた事を何でもやってみる。セール操作は一切無しです。これからのセール操作において、どういう違いになるかを知る為にも、今は一切のセール操作をしない事にします。

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