第六十三話 自由度

ヨットを自分のものにして使いこなすというのが、最もヨットを楽しむ方法ですが、それが自由度という事になると思います。自由に操船できる事。ひとりならそれをひとりでできるようにする事、クルーが居るなら、クルーと一緒で自由に出来ること。

それは操船のみならず、ギャレーを使う、温水、冷蔵庫、キャビンを使う、コクピットを使う、あらゆる部分に自由度を上げて、楽しめるようにする事に尽きます。それは自分のヨットを知り尽くすという事にもなります。そして、この事は、何があっても、臨機応変に対応できる事にもなると思います。それらの自由度が上がれば上がる程に、気楽にヨットに付き合える。

そうなると、こうしたら使いやすくなるというような発想も生まれます。それは何らかの工夫を生み出す事にもなりますし、その工夫が、さらに自由度を高めるという事にもなると思います。

大切なヨットですから、大事に乗る事は必要ですが、それは使わない事では無く、使って、使いまくって、そのうえで、メインテナンスを十分に施していく。理想的には手足のごとくですね。

口で言うのは簡単な事ですが、これらの事は実際は簡単ではありません。もし、毎日でも乗れるなら、そうでも無いかもしれませんが、そうはいきません。あまり複雑なヨットですと、どうなっていたかを忘れる事もあります。ですから、時間はかかるかもしれませんが、自分のヨットの全てを知るつもりで付き合う事が必要かもしれません。

一旦、習熟しますと、他のヨットに乗り換えても、だいたい同じようなものですから、一度習熟してしまえば、どんなヨットでも解るようになります。それが、初心者とベテランの違う処でしょうか。習熟する事によって、仕組みと言いますか、そういうものが解ってきます。そうしますと、物の見方と言いますか、考え方と言いますか、そういうものが身について、新しい物に遭遇した時でも、理解が早くなると思います。

また、取り扱い方も違ってきます。ただ動かすというのでは無く、ちゃんとその物を大切にした取り扱い方というのが自然と身に付くので、いろんな物が長く持ちますね。人によって、同じ物なのに、すぐ壊してしまう人も居れば、全然壊れないという方もおられます。

使いまくって、ちゃんとメインテナンスを施していくヨットは、いつまでも美しい。使い込んだ美しさというものもあります。そういうヨットを見ますと、オーナーの自由度が解るような気がします。どれだけ充実したヨットライフなのかも、解るような気がします。

そうなりますと、自分が使いこなせるヨットというものがあると思います。時間がたっぷりあるか無いか、自分が気軽に感じれる大きさはどの程度なのか?確かに、外に出れば、大きなヨットの方が楽です。しかし、それを言ってはキリがありません。使いこなせるというのは、操船ばがりでは無く、ありとあらゆる部分に、どれだけ習熟できるかという事も含んでいると思います。それが自由度を生み出すと思います。

ヨット遊びはレジャーとも言えますが、それ以上のものがあると思います。何故なら、習得するという学びが必要ですから。でもそれがあるからこそ、レジャー以上に面白さを味わう事になるのかなと思います。

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