第六十二話 これから

古い中古で30年近いヨットも出てきていますが、という事は日本もそれだけのヨット経験を積んできたという事になります。その間にバルブを経験して大型化したり、不況で低迷したり、いろいろ経験してきました。ヨットが買い替えの度に大型化するのが当然のように言われた時代から、今では、小型化される方も出てこられました。

レーサー、クルージング、デイセーラー、いろいろと経験を積んだわけですが、これで1ラウンド終了し、これからは2ラウンド目に入ってきたのではないかと思います。それは、本当にどんなヨットが自分に合うかという事を考えて、みんなが乗るからという事では無く、みんなと同じようにするのでは無く、本当の自分のヨットを手に入れる時代へと、一歩進むのではないかと思います。

車がそうですが、成熟しますと、各個人が、車の選定もそうですが、色やその他が細かく選ばれます。先日、車のシートを張り替える業者の方とお会いしましたが、今日、新車を買って、即、シートのカバーを好みのものへと張り替える方がかなり多いそうです。そういう時代、そういう成熟度と言えるかもしれません。

ヨットはそこまでは無いにしても、これからは個性重視で、大きければ良いわけじゃ無い。小さければ良いわけじゃない、クルージング艇にしても、いろいろあって、好みがあって、乗り方も違っていくんじゃないかと思います。

ちょっと前まで、定員は12名と相場が決まっていました。でも、今日では、無闇矢鱈と定員を増やせば良いというものでは無く、6人で良いとか、4人で良いとか、必要な数にされる方々もおられます。これは小さな事ではありますが、でも、これは確かな意識の変化ではないかと思います。多ければ良いというものでは無く、必要な数あれば良いという事。ちょっと前まではこういう事はありませんでした。みんながそう言うからでは無く、自分はどうかと自分で考えるようになってきた。そういう変化ではないかと思います。

レースはしないからクルージング艇というのが常識だったのが、これからは、レースをしなくても速く走りたいと思う方もおられます。キャビンは広い方が良い、ヨットはでかい方が良い、あれが良い、これが良い、と常識のように語られてきた事に、何となく従ってきたわけですが、そういう時を過ぎて、一歩前に進んできたのではないかと感じてきております。

ハルカラーは白というのが常識で、車だって、昔は白が非常に多かったわけですが、今日ではいろんなカラーの車が走っています。徐々に、経験を積んで、ヨットにたいする意識も変化してきています。日本のヨットは数は少ない、小さなマーケットではありますが、ある種の成熟感が出てきているのではなかろうか?そんな気がする次第です。大歓迎であります。これからが本当のヨットを楽しむ時代、それは各人によって異なる乗り方、個性を重んじる。私は、これが好きだから乗るという時代ではなかろうか?そんな事は誰も意識はしていないと思います。誰もが、これまで好きにやってきたと思っています。でも、不思議な事に、無意識のうちに、全体の意識というものがあって、それが変化して来ているのではなかろうか?

だからといって、日本のヨット界が簡単に拡大するとは思いませんが、でも、これまでとは違う、中身の濃いヨット遊びという方向に向かっていくのではなかろうか?これからが本当に楽しめる時代になりつつあるのではなかろうかという気がします。
動かないヨットが多くなり過ぎですね。これからは、そういうヨットが少なくなるように願っています。

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