第四十七話 EAGLE 36&44

この7月から、オランダ製のイーグル36と44を取り扱う事になりました。これはデイセーラーの流れを汲むものですが、ここにまたちょっとした意識の変化を見て取る事ができます。長い間、造船所とのやり取りを通じ、あらためて考え方の違いを知りました。

 

36フィートと44フィートですから、デイセーラーとはいえ、そこそこのキャビン、狭いながらも、ある程度を造ろうとするものです。しかしながら、このデザイナー及び造船所は、徹底的にデイセーラーというジャンルにこだわり、新しい考え方を持ち込みます。

実際、キャビンは、バウキャビンのみです。そこにバースがあって、収納等があって、トイレがある程度です。テーブルなんかないし、バースとちょっとしたソファーがある程度です。44フィートにしても同じです。そのバースに寝れるのも二人まででしょう。ここでゆったり寛ぐなんて事は、多分無いでしょう。

 
イーグル36のバウキャビン

このヨットを、44フィートもあるヨットをどう使っていくのか? まさしくデイセーラーとしての徹底振りが伺えます。このヨットのメインサロンはコクピットです。それがこのヨットの考え方です。セーリングして遊ぶ時、キャビンに入り込む事はありません。キャビンは寝る時か、トイレを使う時ぐらいでしょう。殆どの時間はコクピットに居ます。それが一般的なヨットとしての使い方でもあります。

それで、広いコクピットを設けて、大きなテーブルを配し、その中央に冷蔵庫と清水シンクを設けています。本格的な料理なんかしませんし、お湯を沸かす程度なら、ポータブルコンロでも良いし、コーヒーメーカーを持ち込んでも良い。みんなで寛げるのはこのコクピットです。ですから。、ここをメインサロンと考えています。


イーグル44                      イーグル36

このヨットのもうひとつの考え方は、セーリングの仕方にもあるようです。帆走性能は高い。しかし、必死に走るというより、優雅さをもって、余裕で走る。そういう走り方を楽しむ方向性を持っています。セールを上げるウィンチは電動です。それに、イーグル44は標準で、メインシートも電動で、しかも、シートの出し入れの両方ができます。バックステーもバングも油圧式です。

そんなに便利にすると、普通のクルージング艇と同じじゃないかと思われるかもしれませんが、そうでは無く、そういう簡単操作ではありますが、ハイパフォーマンスであるという姿勢は崩していません。ボタン操作でも、調整量は任意として遊べますし、何しろ、ハイパフォーマンスである事が重要で、それを楽に操作できて、だからこそ優雅に走る事ができる。

そして、圧巻はこのスタイルの美しさにあります。ロングクルージングを捨てた。そのかわりに得たものは、ハイパフォーマンスとこの美しさ、故に、楽に、優雅に走る事ができる。そういうデイセーリングを目指したヨットです。従来のデイセーラーコンセプトとはちょっとだけ趣向を異にしています。

コクピットこそが、このヨットのメインサロンである。なる程、そういう考え方もあるのかと思った次第です。では、雨が降ったらどうするんだ、と聞く人が居るでしょう。私もその一人です。ドジャーとビミニトップ、或は、ブームのうえからテントを張っても良い。しかし、それでもダメなら、無理して、そこで食事しなくても良いんじゃないか? また、次の機会でも良いんじゃないか? 次の機会がすぐ来るような、44フィートあっても、気楽に付き合えるヨットでもある。そういう返事が帰ってきました。
なる程、なる程。

もっと気軽にヨットと付き合った方が、ヨットはもっと楽しめる。雨も降れば時化る時もある、何が何でも乗るぞという気合より、ではまた今度、というぐらいに気楽に、何度でも付き合って、長く過ごしていった方が、もっとヨットというものを楽しめるのではないか?

幸い、日本人にとっては、長い休みは取りづらいが、飛び飛びの休みは多いものです。だから、こんな風に付き合えると、ヨットはとっても面白くなると思います。だから、デイセーリングは、日本人にはピッタリではないかと思う次第です。

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