第二十話 デイセーラーという市場

欧米でデイセーラーという新しいジャンルの市場が広がってきているのは事実です。その証拠に、次々とニューモデルが登場してきています。この20年の間に、デイセーラーというジャンルに対する、考え方がすっかり変わってきました。

20年前、この新しいアイデアは受け入れられなかった。それは、多分、クルージング艇としての広いキャビンは無いし、かといってレーサーとしてのポテンシャルでも無かった。だから、どういう具合に付き合えば良いのかが解らなかったのかもしれません。

帆走性能としては、クルージング艇とレーサーの間、キャビンは小さい。でも、シングルハンドで容易に操作ができる、気軽にセーリングに出せるヨットであった。そこに、元大型艇のオーナーが集まってきます。もう遠くには行かないし、クルーを集めるのも大変だし、ましてメインテナンスにも相当煩わされてきた。でも、引退はしたくない。現役で、気軽にセーリングを楽しみたい。そういう方々が、このデイセーラーを支持し始めます。

そこから始まって、徐々に、他の方々もデイセーラーに注目していきます。シングルで、気楽で、それでいて、十分に高い帆走性能を持つヨットとの付き合い方というのができてきます。

人が集まると、そこに市場ができます。その動向を見て、他の造船所も同じコンセプトのヨットを建造してきます。そうやって、次から次に増えていきます。増えると、今度は、差別化を図ろうとする造船所も出てきます。その典型は、超ハイスピードのデイセーラーです。レーサーのポテンシャルを持ちながら、それでもシングルハンドでも操作ができるというものです。また一方では、デザインの美しさを強調していきます。

これら全部の基本は、デイセーラーとしての機能、ハイパフォーマンスとシングルハンドです。それを基本に、スピードをもっと求めるか、これはモダンデザインですね、美しさを、これはクラシック系です、求めるか、この二つに別れていきます。そのミックスも出てきます。

ある造船所の弁ですが、欧米でさえも、時間が無い人達は多いそうで、これまでよりももっと気軽に付き合えて、1日、2日を十分堪能できるデイセーラー市場は広がっている。デイセーラー自体は昔からあったものですが、この新しいデイセーラーは、帆走性能の良い、従来のヨットとは違うものとして捉えられています。

大海を旅するかレースだったのが、現実を見れば、仕事や家族の事、いろいろ考えれば、現実は、そう遠くない海域で、セーリングしたり、ピクニックしたり、アンカリングして海水浴だったり、レースだったりするわけです。その現実的に行われる使い方に対して、従来のクルージング艇よりも、デイセーラーの方が合っている。そういう具合に考える人達が増えてきている。彼らにとって、大きなキャビンは、別荘代わりだったわけですが、その必要も無いという人達も大勢いるわけです。

さらに、ヨットだけが彼らの遊びでも無い。家族で旅行もするだろうし、子供は遊園地の方にも行きたいかもしれない。他にもする事はたくさんあるわけです。ならば、ますますヨットの付き合い方を考える必要があった。でかいキャビンは別荘にもなりますが、それだけにちょっと気軽にヨットを出してというのが、気分的に楽では無い。デイセーラーなら、もっと気軽に付き合えるわけです。
家族の為や長い旅を考慮して、キャンピングカーを買ったが、日常に使うには面倒くさい。それで、スポーツカーにしたら、気軽だし、それに高い性能を味わえるようになった。そういう事ではないかと思います。

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