第九十一話 もっと速く?

デイセーラーがハイパフォーマンスだとしても、例えば、それでレースに出るようになり、そこそこ走れるようになりますと、もっと速くという具合に変わっていく方もおられます。

アレリオン28というヨットは、シングルハンドでデイセーリングを楽しむには非常に良いヨットだと思います。しかし、レースに出て、もっととなりますと、もっと速く走りたくなります。アレリオン28では、バックステーが有りますので、メインセールもそれを越えて大きくする事はできません。それで、その後に出てきたヨットが、バックステーを無くして、メインセールを大きくしたわけです。その結果が、アレリオン33であり、38であります。SADR値でも、23ぐらいになります。さらにスポーティさを加えたのが、アレリオン33スポーツという事になり、SADR値は25に近くなります。

一般的なセーリングにおいて、性能的にも十分だし、レースに出るにしても、ジェネカーを加えて行けば十分走れると思います。しかしながら、人によっては、もっともっとと言われる方もおられます。それが、デイセーラー/レーサーという方向になると思います。

ここに至りますと、性能は極端に速くなり、SADR値が30を超えます。但し、レースとしての走りは速いものでしょうが、通常のシングルハンドセーリングにおいては、アレリオン等よりもより敏感になりますから、そういう操船の仕方が必要にはなると思います。クルーが居る時は良いんですが、シングル時の使いやすさ、特に風が強くなった時ですね。でも、それも面白さのひとつですし、オーナー次第です。

これらデイセーラーは、セールエリアとしては、それ程大きくは違いません。しかし、速いのは、排水量が極端に軽いです。30フィートから33フィートあたりまで、排水量は約2tか、もうちょっとぐらいしかありません。いかに軽く造るかという問題になります。それで、SADRがどんと跳ね上がります。

しかし、ここまで行きますと、それなりの乗り方というものもあるでしょうし、誰にでもお薦めできるものでもありませんが、一部の方では、通常はシングルで強風を避け、レースでは3人ぐらいで、突っ走って走れる。そこに魅力もあります。うまくなれば、強風だってこなせるかもしれません。

今後としては、従来のアレリオン、ハーバーヨットというSADR値20前後から25ぐらいまでのデイセーラーと、もうひとつSADR値30を超えるデイセーラーを取り扱うべく、調査中です。SADR値25〜30の間というのは、調べた限りでは殆どありませんね。中途半端になるからかもしれません。

デイセーラー/レーサーという名前をつけましたが、造船所では、特にレースに限っているわけでは無く、もちろんワンデザインのレースを楽しんでいますが、兎に角速いパフォーマンスを強調しています。それでも、シングルでも走れる事も強調しています。特にレーサーという名前を造船所が付けたわけではありませんので、ご了解下さい。あくまで、他のデイセーラーとの違いを明確にする為に、私が勝手にそう呼んでいるだけです。

そういう一連のデイセーラーは、デザインも似ていて、多くはイタリア人デザイナーに寄るものです。幅は狭く、軽く、オープントランサムで、Eグラス/エポキシのバキュームインフージョン工法、或は、カーボンを使うのもあります。もちろんサンドイッチ工法ですし、バラスト比は50%前後。メインセールはスクウェアートップで、パワフルなメイン。操作はコクピットに集中しています。

ヨーロッパ系は、そういうのばかりかと言いますと、全く違うタイプもあり、クラシックで実に美しく、優雅な雰囲気を持つヨットもあります。それもシングルでハイパフォーマンスです。

つまり、2タイプ。いずれもハイパフォーマンスですが、シングルを遊ぶハイパフォーマンスと、レースをも視野に入れた超ハイパフォーマンスです。どちらも実に興味深いです。そのうち詳しくご紹介できると思います。

今日の一曲 ビル エバンス Nardis

次へ       目次へ