第八十三話 微軽風とダウンウィンドの発想

レースだったら、クルーが居るでしょうから、スピンやジェネカーを使うに、あまり問題は無いと思いますが、レースでは無いセーリングにおける、我々一般のセーリングを考えた場合、なかなかジェネカーにまでは進めないかもしれません。まして、シングルハンドなら、尚更です。これを少しでも何とか解決しようとしたのが、ジェネカーセールを長い袋に入れるシステム、スナッファーやファーリング方式です。

ところが、これとは全く異なるアプローチをしたのが、ジブブーム+ライトエアーイクステンダーです。これについては、これまで見てきた通りです。その装置を使えば、メインセールとジブセールだけで、微軽風はおろか、上りから下りまで、あらゆる角度を克服する事ができます。それがこの艤装の発想です。これさえあれば、誰もが、あらゆる場面でのセーリングを簡単に堪能する事ができる。活気的なアイデアだと思います。

この艤装は、アレリオンの開発に深く関わっていたゲーリーホイト氏によるアイデアです。それまでは、通常のセルフタッキングジブとメインでした。そして、当時はスピン艤装のオプション設定がありました。しかし、このジブブーム+ライトエアーイクステンダーの開発によって、スピンを不要としたわけです。

しかし、時代は進みます。もっとスピードを求めるようになります。そのスピードとは、微軽風でも、もっと走るようにというものです。過ぎる強風は避ける事ができるし、スタビリテーが高く、硬いハルなら良いわけです。

   そこで考えたのが、より大きなセール
   エリアです。そこで、マストをカーボン
   に変え、バックステーを撤去し、メイン
   セールを大きく取りました。
   それが最初に、アレリオン38として登
   場します。ビデオを見ましても、メイン
   セールは大きい。ですから、このまま
   で、微風でもより速く走れる。そして、こ
   のままダウンウィンドも走れます。ジェネ
   カー不要なのです。そのセールエリアを
   大きくしたと同時に、バラスト比も上げて、
   46%に至ります。

   ビデオによりますと、上り、風速4ノットの
   時、ボートスピードは3ノットで走っていま
   す。我々が通常セーリングを遊ぶ時には
   十分かもしれません。風が強くなってきた
   ら、メインをリーフ、ジブとリーフしたメイ
   ンで、真風速22ノットまで快適に走れる
   と言っています。さらに風が強くなった
   ら、ジブを巻いてしまう。リーフしたメイン
   で真風速30ノットまで走れる。
   それ以上の風になったら?
   その時はセール下ろして帰りましょう。
   こんな強風でも乗れますが、楽しいわけ
   ではありません。





つまり、このメガメインセールは、ジブブーム+ライトエアーイクステンダー+高いスタビリティー+硬いハル、これらの総合で、微風から強風、上りから下りまで、メインとジブだけで快適なセーリングをシングルで可能にするというものです。

その後、アレリオン33が登場し、コンセプトは同じです。ジェネカー不要論なのです。但し、アレリオン33はスポーツバージョンを別途として登場させています。それは、スポーツと名付けて、さらにスピードアップを図ったわけですから、ジェネカーの採用を考慮しています。

一方、従来からあるアレリオン28ですが、現在でも多くがメインとジブだけで走っています。しかし、時代の要求と言いますか、もっと微軽風でのスピードを求めるならば、現在はジェネカーを採用するようになってきました。これはオーナー次第です。

さて、基本的考え方ですが、我々がセーリングをシングルを前提に堪能するとして、そこにジェネカーという三番目のセールを必要とせずに、微/軽風から強風、上りから下りまでのあらゆる状況に対応したのが、このジブブーム+ライエアーイクステンダーだと言う事です。ですから、基本的に、特にメインが大きな33と38、そして現在開発中のアレリオン41にしてもジェネカーは不要だとしています。

それでは、これにジェネカーを展開したら、もっと速く走れるじゃないかという事になりますが、それはその通りですが、それではいつまでもキリがありません。ジェネカーを使えば速くなる。でも、シングルハンドにおけるセーリング、別にレースを目指しているわけでは無い。そういう事を総合的に考えた時、どういう艤装が良いのか?それを、アレリオンではジェネカー不要というアプローチとしたわけです。

今日の一曲  デーブブルーベック Take Five

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