第七十三話 船体

セールにパワーが乗ったら、そのパワーはマストにかかり、そのマストを支えるステイにかかり、そのステイが繋がれる船体にかかる。この船体にかかるパワーはすごいもんです。

セールを上げていない状態でも、マストを支える為に、ものすごい力が船体にかかります。マストを立てる時、ステイのターンバックルをぐいぐい締め上げていきます。それだけでもすごい力なのに、おまけにセールにかかる風のパワーまで受けとめるわけですから、船体がいかに高い剛性が必要なのかが解ります。

ステイを船体側で受け止めるのがチェーンプレート、そのチェーンプレートは船体にグラス積層されたバルクヘッドとかに繋がれます。バウなんかですと、ステム部分のボルト締めされています。
船体が弱いとねじれますし、へたするとバックステーを締めても、ある時点から船体の方が曲がってくる。

以前ですが、船体がねじれて、キャビンサイドの窓のアクリルに縦のクラックが何本も入るというのもありました。また、オーバーヒールして、サイドデッキまで海水に浸かり、ハルとデッキの接合面から水漏れしたヨットもありました。

剛性を高めるには、ハルの厚みを厚くする。全部FRPでやりますと、相当重くなりますから、もちろん、サンドイッチ構造です。サンドイッチにしますと、剥離が気になりますから、バキュームバッグ方式で圧着するようになり、さらに、硬くする為に、樹脂比率をコントロールするインフージョン工法をするようになります。ちなみに、アレリオンはSCRIMP工法と言って、同じ工法なのですが、結構昔からこの技術を確率していました。

この上、ストリンガーや家具類を積層し、さらに強度を高めます。アルコナ社では、船底に、フレームを埋め込んで、それにキールやステイを接続する方法が取られています。

   左の写真がそのフレームです。
   このように、走りを気にするヨットは、船体
   を軽く、でも強く造る事に注意を払います。

   そして硬い船体ができたら、風にも負けず
   波にも負けず、スムースな乗り心地を
   与えてくれます。これがまた、気持ちが良
   いんです。






今日の一曲  キースジャレット When I Fall In Love

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