第六十話 艤装

デイセーラーに殆ど共通した艤装があります。それは、ピュアデイセーラーでも、デイセーラー/クルーザーでもレーサーでも殆ど共通しています。そのヨットがどのジャンルに入るにしても、シングルハンドを視野に入れているからだと思います。

セルフタッキングジブ、シート操作は右舷からでも左舷からでも操作する事ができます。しかも、セールが比較的小さいので、多くの場合でウィンチを使わないで操作ができます。もはや、風下側のウィンチ操作は不要という事になります。

メインシートのトラックはコクピットより後ろ、そのメインシートをコクピットにリードして、ブロックと組み合わせ、片手で引けるようにしています。

つまり、舵を持ったまま、手が届き、片手でコントロールする事ができます。さらに、バックステーアジャスター、トラベラーコントロール等にも手が届きますしかし、大型艇になりますと、さすがに片手とはいきませんので、そういう場合は電動ウィンチをコクピットに設置して、そこで全てをコントロールするデザインになっています。あくまで、大型艇になってもシングルハンド仕様です。

これらの艤装は一般クルージング艇にもだいたいあります。ただ、その配置の仕方と必要な力が異なりますので、デイセーラーの様な操作はできません。クルーが必要になると思います。それと、もうひとつ、クルージング艇にはほとんど無いであろう艤装がカニンガムです。

   この図は一例であって、他のやり方も
   当然あります。要は、メインセールのラ
   フを下側から引いてテンションをかけま
   す。

   これは通常のクルージングに無くても構
   わない装備ではあるかもしれません。し
   かし、セーリングをテーマにした場合で
   は、あった方が良いという事になります。

   この艤装は使わなくても構わない。それ
   でセーリングする事に支障がそんなにあ
   るわけではありません。でも、解ってきま
   すと、あった方が良いという事になります。

   最初にメインハリヤードでセールを上げ
   て、テンションをかけます。でも、状況に
   おいて、例えば、強風になってきたとして
   、バックステーアジャスターでマストをベン
   トさせ、セールをフラットにした場合、
   マストが曲がったせいで、ラフテンショ
   ンが緩んできます。ラフテンションが緩み
   
ますと、ドラフトが後ろ側に後退し、ヒールする力が大きくなります。それを適切な位置に戻し、推進力側を大きくした方が良い事になります。この時、カニンガムでテンションをかけます。すると、ドラフト位置が前側に移動してきます。そこまでするかしないかはオーナー次第です。しかし、解ってくるとしたくなるもんです。

ラフテンションはハリヤードでかける事もできます。カニンガムとの違いは、ハリヤードを引きますと、メインのリーチ側にもテンションをかけますので、リーチが閉じてきます。ですから、リーチが閉じたら、それを元に戻す操作が必要になりますが、カニンガムならそいいう操作は不要になります。また、その他、ハリヤードが伸びたりしますので、そういう場合にも使います。

セーリングをピクニックする場合、何もそこまでしなくても、メインシートとジブシートだけでも構わないと思います。それだけでも走る事ができます。しかし、セーリングの事が解ってきて、セーリングを楽しもうとする場合、解っているいるだけに、もっと良くしたいという欲求にかられます。それがピクニックとは違うセーリングです。その為に、他の艤装がありますし、手が届く処にあって、簡単に調整ができる。それがデイセーラーの艤装の仕方です。

簡単に操作はできますが、どの程度のテンションをかければ良いのか? それがこれから先、経験を積み重ねながら、習得していく事になります。それがセーリングの面白さではないかと思います。そして、調整する事で反応が解るレスポンスの良さ、但し、オーナーにも感知能力を上げていっていただかなければなりません。

つまり、デイセーラーのセーリングは簡単ですから、初心者の方にもすぐに乗れるようになります。ですが、オーナーがうまくなるに従って、それに応じて反応してくれます。そこがこのヨットの面白い処ではないかと思います。ピクニックは乗れればそれで十分かもしれませんが、セーリングの質を上げるなら、いろいろ解って、いろいろ操作して遊んだ方が面白い。成長していくセーリングです。すると、微軽風から強風に至る風域において、面白さの幅が広がりますね。適応能力も上がります。上手くなった実感も湧きますし、自由自在感も遊べます。それがクルージング艇とは違う処です。

最後に、ライフラインについてですが、通常、デイセーラーにはライフラインを設置していません。必要も感じません。しかし、クルージングに行くなら、ロングになるし、子供なんか居たら、長い間、コクピットにじっとしていられないかもしれませんし、そういう事ならライフラインを設置しても良いと思います。それ以外、通常のセーリングでは、最初から無いと解っていますから、ちゃんとどこかに掴まってバウに移動したりします。まあ、そういう事は滅多にはありませんが。でも、ジェネカーを設置しにバウに行ったりします。でも、それでも、気を付けていきますから、これまで必要性を感じた事はありません。

ライフライン有り(アレリオン33S)          ライフライン無し(アレリオン33S)


今日の一曲 ビル エバンス 枯葉

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