第六話 SCRIMP工法

アレリオンはこのSCRIMP工法で建造されます。造船所のピアソン社は、もう随分前から、この工法で建造してきました。最近では、他の造船所でもこの工法を使うように徐々になってきました。それはバキューム・インフージョン工法とも言われます。同じ工法です。

バキュームを使った建造のやり方は昔もありました。このバキュームバッグ方式は、塗布された余分な樹脂を抜き出して、同時に気圧で圧着しようというものです。最近では、チークデッキなんかでも、ビス一本使わずに、接着材を塗布してチークを張り、バキュームバッグで圧着します。

さて、SCRIMPですが、バキュームバッグを使う事は同じです。しかし、根本的に異なるところがあります。それは、グラスと樹脂量の比率をコントロールできるという事です。これには、たくさんの試行錯誤によって、あるレベルの技術が必要なようです。ちょっと難しい。だから、まだそう多くは無い工法です。小さな物ならまだ良いのでしょうが、ヨットのように大きく、しかもいろいろな形状をしている場合は、難しい。

 アレリオンヨット

写真のように、フィルムで全体をカバーします。たくさんのホースが繋がれ、それらは樹脂の入った容器に繋がります。一方、余分な樹脂を吸い出すホースもたくさん繋がれ、その先は樹脂を溜める容器と真空ポンプに繋がります。多分、このホースの設置箇所とか、真空ポンプをどれぐらいのパワーで引くとか、そういうものが影響するかと思いますが、ポンプで真空引きすれば、樹脂が吸い出され、モールド全体に広がり、余分な樹脂は排出ホースによって、吸い出される。完了したら、このまま、しばらく置いて、乾燥させます。

この技術のメリットは、グラスと樹脂の比率を最適にコントロールできる事、積層間の圧着が強くなる事、積層間にエアーが残らない事等々です。これによって、一般のヨットと同じ重量なら、より強く、同じ強度ならより軽くできるというものです。実際、昔からの工法であるハンドレイアップより、2,3倍は強いと言われます。この方法でハルもデッキも造られます。

これで作られたヨットは何が違うのか?ハルが強いというのは、最も感じるのはスムース感です。ただ、頑丈なのでは無く、軽いという要素もありますから、走るのは良いし、その硬さが何とも滑らかな感じを与えてくれます。波に負けないという事かと思います。今の処、最も進んだ工法ではないかと思います。確かに、アレリオンに最初に乗った時、滑らかだな〜と感じました。それに、ふっと加速感も感じます。

この写真は終了後乾燥後の写真のようです。ホースはもっとたくさん繋がれます。特許工法だそうです。これによって、ハル建造は変わってしまいます。まず職人さんの熟練度の違いが無くなります。それにクリーンです。同じ厚みでも、樹脂量が多くなりすぎると重くもなるでしょうし、少な過ぎると、接着力にも問題が出る。確か、グラスと樹脂の比率は60:40が良いという事だったと思います。一旦技術を確率しますと、バラつきも無くなります。

今日の一曲 ゴンザロ ルバルカバ ジョンレノンのイマジンを演奏しています。

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