第四十六話 力強い一言

デイセーラーだ、ハイパフォーマンスクルーザーだ、セーリングを見直そうとか、沢山書いてきました。その理由も自分なりに理論的に書いてきたつもりです。しかし、それでヨット社会が変わるかと言いますと、そんな事は無いわけで、社会は社会の勝手な都合でしか変わらない。そんな事は十分承知しています。しかし、そう言い続ける事は必要かと思っています。

恐らく、クルージング艇はまだまだ、何とかしてキャビン拡大に向かうだろうと思います。。そして、その巨大なキャビン付きヨットを、いかに簡単に動かせるようにするかという手法が後から付いてきます。それは誰にも止める事はできません。その方向に発展するしか無いからです。

しかし、誰かがつぶやいた一言、”そこまででかいキャビンが必要か?” あるオーナーが実感を込めてつぶやかれた一言です。この一言が、きっかけとなって、クルージング艇離れが起きないとは限りません。もちろん。、すぐに起こる現象ではありませんが。

この一言は、実感した一言であり、誰かを説得しようという言葉ではありません。だからこそ、そこに本音があります。だからこそ、力があります。本当は、細かい理屈なんか必要無いのかもしれません。それらは、後からついて来るものかもしれません。この一言に比べたら、こんなに沢山書いてきたいろんな言葉も、この一言には敵わないのかもしれません。

このつぶやきの言葉を出された方の背景には、自分自身の実体験から、そのキャビンのでかさ故のメリット、デメリットを考慮し、否、理屈を越えて、心の底から出てきた言葉だと思います。そういう方が、ひとり、ふたりと増え、ある程度まで増えるまでは、現在のキャビン拡大が続くのでしょう。それが臨界点に達した時、社会は変わり始めます。

欧米はその臨界点に向かって、既に変わり始めたのではないかと思います。20数年前に、デイセーラーが生まれ、それが沢山増えてきています。これらのヨットが、どうであれ、ある概念が生まれ、それが広がりつつある事は事実です。人々が変わり始めている事実です。デイセーラーのオーナーは、元はクルージング派の方々です。それがある臨界点に達すると、現在のクルージング艇も、何らかの変更を余儀なくされると思います。それがどう変わるかは解りませんが?

このつぶやきの一言は、実情を表しています。キャビンが広くて良いなと誰もが思う処に、一石を投じる一言です。もちろん、今は何の影響も与えていません。しかし、これが後日、大きな力を持ってくるのではないかと感じています。本当は既に、多くの方々が、薄々感じてあるかもしれません。

ヨットがその定位置に常に有る存在なら、それは良いのでしょうが、ヨットは動くものという事実、ヨットがヨットである存在理由を思い出した時、それはまた別の方向性が見えてくるのではないかと思います。今はまだその段階には無いのでしょうが、欧米では既に動き出していると思います。

では、私も一言、我々は、そのヨットで一体何をしたいのでしょうか?

これは私の実感として感じる疑問です。我々は、そのでかいキャビンで何をしたいのでしょうか?そのヨットのセールで何をしたいのでしょうか?

さらにデイセーラーのご紹介を続けます。

今日の一曲 渡辺 貞夫 Misty

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