第四十七話 ポジショニングシステム

パワーボートの世界を時折覗いてみます。既にヨットにも採用され始めたジョイスティックによる横歩きのコントロールはもちろん、今度はダイナミックポジショニングシステムなるものがあります。

これはボートを停止し、スイッチオンで、その位置とバウの方角をそのまま維持するものです。風が吹こうが、潮流があろうが、常に、バウの方角とその位置をキープする働きです。フィッシングに使う、燃料を入れる時、何か停止状態をキープしたい時に使うという提案でした。

ボートの世界は市場が大きいせいもあって、次から次に、新しい何かが開発されます。このシステムがヨットにもあったら、係船ロープをはずしても、ヨットはその位置をキープし続けます。確かに、それは便利ですね。風上に向けて、セール上げる時にも使えます。もちろん、下ろす時も。

ただ、GPSとエンジン、バウスラスターの連動だそうですので、ヨット界にはまだまだ。それに、ボートの世界はお金の使い方が違います。ヨット界がボート界のようでしたら、スイッチオンで、セールを出す角度をコンピュターと連動して、風向風速計と連動して、自動的に決定できるようにするかもしれません。

もし、未来に、そういう一連の装置が開発されたら。それこそ誰でも操作ができるようになります。桟橋の係船ロープを外して、それも風向なんか考える必要も無い。ヨットはそこにじっとしています。それで、ジョイスティックで、今度は出航し、そういう時代ですから、電動ウィンチでセールを上げて、或いは、スイッチを入れれば、自動的にヨットは風上に向かって、自動的にセールを展開し、そこで舵を切れば、それに合わせてセールの出し入れもしてくれる。未来はそんなセーリングも出てくるかもしれません。技術的には可能でしょう。練習なんか殆ど必要無い。

さらに、入港でも、例えばコンピューターに位置が記憶されていて、GPSとの連動で、すぐ近くまできたら、スイッチオンで、自動的に桟橋に横付けして、そこで停止状態を保つ。夢のような話です。

全部自動化されると、誰もがすぐにヨットに乗れます。自動化で失うものもありますが、でも、これはこれで、そういう発展はあってしかるべきです。選ぶのは自由ですから。

これでもか、という発展がある事が我々の進化。そういう事が無くなると、面白くは無い。でも、それを使うかどうかはまた別な話で、個人の価値観にもよりますね。これらは、専門のメーカーに期待するとして、我々、使う側も進化していかなければなりません。

何らかの装置を発明する事は無いにしても、使い方、セーリングの仕方、そういうものを常に前に前に進めていく方が良い。それが面白さになるかと思います。確かに、ヨットは風頼りですが、頼ってばかりでは、風任せ。風次第ばかりでは面白さが半減します。いろいろある風、風は常に変化しますから、どこまで遊べるかは、自分次第という事を考える。

強風だろうが、微風だろうが、上りだろうが下りだろうが、できるだけ多くの風で遊べるように進化するのが我々の在り方であり、面白さを広げる事になると思います。良い風が吹いた時だけでは、そう多くは遊べない。だから微風になったら、即エンジンかけて帰るのでは無く、何か方法は無いか?無風になったら、それこそどうにもなりませんが、そんな時でも、漂う感じを遊べるか? 多少は無理を言っているかもしれませんが?自分の為に考える余地はあるかもしれません。

自分のポジションを考える。そういう事かもしれません。セルフポジショニングシステムを自分の中に持つ。そういう事かなと思います。今の状態で、何かできる事はないか?できない事を考えて、ああだったら、こうだったら、もうちょっと吹いてくれればと考えても、それは無駄ですから。できる事を全部して、それでも、どうにもならない時は諦める。そういう事もありますね。

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