第九十八話 確率

全ては確率の高い順に起こる。高い順というのはちょっと可笑しいですが、この世に絶対が無い限り、99.9%の確率は、まず間違いなく起こるだろうし、0.1%の確率はまず起こらない。あれば奇跡と呼ばれます。でも、絶対に無いとも言い切れない。

物理の世界では、物質さえも、粒子レベルで言うなら、確率的に存在しているらしい。その物の動きによる、出来事の発生も確率的と言って良いかと思います。確率はなにひとつ確かなものは無いという事になり、厳密に言うなら、99.9%の確率でさえも、絶対あるとは言い切れない事になります。つまり、全ては不安定な状態にある。だから、未来はどうなるか解らないという事になります。でも、逆に考えると、未来はどうにでもなる?

ヨット遊びも確率の世界。いかに遊ぶかは、いかに確率を高めるかで決まってくる。偶然にも良いセーリングになる事があります。グッドフィーリングを得る事があります。でも、それはたまたまであり、たまたまである限り、今後の確率は非常に少ない。つまり、たまたまを当てにしては、面白くはならないという事かと思います。

それで、確率を上げる為に、それなりの性能のヨットを求め、それなりのセーリングノウハウを取得して、確率をを高めていこうとします。そうする事が、より多くのグッドフィーリングを得る方法ではないかと思います。しかし、それでも、100%にはならない。でも、それが見方によっては面白さと捉える事もできなくはない。

言うならば、これはゲームでありますね。確率を上げれば、長期間を見れば、確実にグッドフィーリングの回数は多くなる。でも、ただその1回を見れば、それはどうかは解らない。ヨット遊びは、1回のレジャーでは無く、長期間を見据えた、確率のゲームではないかと思います。

それをゲームとしてみなすのは、その一回一回に結果を求めるわけでは無く、長い期間に渡る確率の変化を面白がる。どうやって確率を上げて行こうかとするゲームなのではないかと思います。
すると、それは結果のゲームでは無く、あくまで確率であって、絶対は無いから、結果のみを重視するのではなく、プロセスを楽しむゲームになるのではないかと思います。

そう思うと、確率を意識し、確率を高める為にはどうしたら良いかと考えます。どんなヨットが良いか、どこのマリーナに置くのが良いか、何人で乗るのが良いか、どういう使い方をすれば良いか、どういうメインテナンスをすれば良いか、運営トータルがゲームだと思えると、面白くする事ができるような気がします。

目的は面白さです。そうなると、オートパイロットを使うのは、その面白さの確率を上げる事ができるかどうか、と考えます。便利だからとは違う視点です。それは面白いのか? メインテナンスをすると、それは面白さに繋がるのか? そういう見方が確率を高め、それによって、いろんなフィーリングを得る事ができる。

どこのマリーナに置くかもそのひとつで、2時間かかってマリーナに行くぐらいなら、いっその事、沖縄に置いておくという面白さも考えられます。

決まったクルーが居ない場合、ひとりで動かせないヨットを、いつまでもそのままキープするのは、確率は下がるだろうと思います。それなら、ひとりでできるヨットに買い替えた方が、面白さの確率はあがる。買い換えようが、買い替えまいが、今しているゲームを意識する事が重要ではないか? 意識したうえで、そのままにするゲームもあれば、変えるゲームもある。

面白さの確率以外にも、何かの確率というものがあると思います。そこで、思う事は、いったい何の確率が上がれば良いのか?上げようとしているのか?それさえ解れば、どうしたら良いのかが明白になると思います。

たかがヨットではありますが、どんなゲームをプレイするかによっては、この上も無く面白くもなり、逆につまらなくもなる。つまらないと思うのは、ゲームのプレイの仕方に問題があるのかもしれません。是非、面白いゲームの確率を高めるという視点でヨットを見てはと思います。

面白さとは何か? 家族を載せてセーリングに出る事かもしれないし、仲間を載せてやる事かもしれません。或いは、セーリングの妙を味わいたいかもしれませんし、レースでトップ取る事かもしれません。それは各人自由なのですが、その自分の面白さをもう一度認識して、その確率を高めるというゲームを遊ぶ。そういうのはどうでしょうか?

クルージングなら、例えば日本一周したいと考え、ではその確率を上げる為に、近所のクルージングから始めて、あっちこっちに行き、だんだん遠くへも行けるようになる。最後は日本一周できるでしょうが、それができた時だけが面白さでは無く、そこまでの過程も面白い。セーリングもレースも同様かと思います。

つまり、何かを求めて、その確率を高めていくゲーム。その過程から達成まで、意識していけば全部面白くする事もできるのではないかと思います。という事は、その一回のセーリングが無風だったとかには、あまりがっかりする事も無い。そんな日もあるさ、てなもんです。

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