第九十七話 シングルの武器
| クルーが居るかいないかは雲泥の差、しかも、５人が４人になったぐらいではそうでも無いでしょうが、ダブルハンドとシングルハンドでは、その差は２倍どころか、相当なもんです。それで、シングルにするには、それ相応の武器を使います。 船体の安定性が高いというのは、大きな武器ですね。突然のブローが来て、大きく傾くか、或いは、持ちこたえるか、シングルでは、舵から手を離せないので、そのままセールの風を逃がすテンポが遅れてしまいます。舵を離さないと手が届か無いなら、尚の事、安定性が高いというのは、かなりな武器になります。 良く、スタビリティー消失角が１２０度とか、いろいろ言われますが、これは転覆する時の話、通常では、セーリングの風に対する腰の強さ、これが武器になると思うんですが。 セールプランもそうだろうと思います。大きなジェノアの時、そのブローでジェノアを操作するなら、風下側のシート操作になります。これもとっさにはできません。さらに、メインシートもキャビン天井にあるなら、これはもっと難しい。そこで、大きなメインで、トラベラーはコクピットにあって、そこでシート操作ができるなら、とっさにも対応ができます。それで、小さなジブとのコンビネーションなら、 メインを優先して操作すれば良いわけですから、これも武器になります。 それに、小さなジブにするなら、シートウィンチを巻く時、必要とされる力も軽減されるし、タッキングもその分楽になります。それに、メインセールの方がコントロールしやすい。 オートパイロットは、シングルでの操作の時、セールを上げたり、降ろしたり、キャビンから何か物を取り出す時なんかは武器になる。でも、それは一時的に使うのみ。大きなジェノアにすぐに対応できるように、オートパイロットに舵を任せるというのは、ちょっと別な話。セーリングを楽しむのは、オートパイロットでは無く、オーナーなんです。でも、シングルハンドにとっては武器になります。 ジェネカーを展開するなら、ファーリングは武器になる。さらに、ダウンウィンドでのジブブームなら、その武器としては強力であります。 このように、セーリングの中で、シングルハンドと言う時、その操作性というのは、ダブルハンドとは全然違う操作性が必要になり、それを容易にしてくれる、これらの武器があるか無いかは、全然違ってくると思います。 メインセールをファーリングにするというのもひとつの方法です。しかし、これはセーリング性能を落としてしまうので、操作性の向上と性能を天秤にかけて、でかいヨットであればある程、その武器としての効果は大きくなりますが、そうでも無いヨットなら、通常のスライダーとか、ベアリング付スライダーとか、それらで充分ではないかと思います。 シングルを考えておられる方は、これらのシングルハンドの武器という事を考えても良いのではないでしょうか？ ダブルハンドなら、これらの武器は無いなら無いでもいいかもしれない。舵担当者とセール担当者に分けて、とっさのブローに対応する事もできます。でも、シングルハンドというのは、ただ人数の問題だけでは無く、全く違う乗り方ではないかと思います。ですから、武器を有効に使います。 |