第五十二話 実際は?

データから計算してとか書きましたが、実際にデータを探しますと、I J P Eが出ているけども、標準仕様のセールのセール面積が無い。逆に、標準のセール面積は出ているものの I J P Eのデータが無いと、いろいろあります。ここで無理やり条件付きながらも、計算しますと、勘違いもあるでしょうから、ここは、各人が解ったうえで、計算し比較した方が良いのではないかと思います。

一番良い比較の仕方は、現在乗っているヨット、或いは過去に乗ったヨットのデータを出してきて、それとの比較でみることかと思います。すると、実感として解っているので、それと比べてどうかと解りやすいかと思います。

最近、クルージング艇からの買い替えで、アレリオン28を求められる方が、ぼちぼちでてこられました。それで、典型的クルージング艇と比較してどうかと考えます。

典型的なキャビンヨット、31フィートのヨットですが、数値は下記の通りです。
<ヨットA>
バラスト比:24.7%
水線長/排水量比=199
セール面積/排水量比=15.6

<アレリオン28>
バラスト比=38.6%
水線長/排水量比=213 水線長が短い
セール面積/排水量比=17.6

明らかにセーリングにおいてはアレリオン28の方が性能は高いです。セーリングを視点におきますと、アレリオンの方が上です。でも、キャビンはヨットAの方がはるかに大きい。それがコンセプトの違いになります。キャビン重視かセーリング重視かですね。

これが最近のハイパフォーマンス艇になりますと?34フィートです。
<ヨットB>
バラスト比=39.6%
水線長/排水量比=170 水線長が長い
セール面積/排水量比=21.4

ヨットBはアレリオン28をさらに超しています。でも、アレリオン28はシングルで簡単。ヨットBはダブルハンド。

そしてさらに、最新のアレリオン33Sでは?
バラスト比=41%
水線長/排水量比=204 水線長が短い
セール面積/排水量比=24.4

さらにヨットBを凌ぎます。もちろん、ヨットBに130%ジェノアとか使えばもっと走りますが、シングルにしても、ダブルハンドにしても、操船のし易さを考えまして、ノンオーバーラップのジブセールを使うという考え方の方が良いかと思います。アレリオンの水線長/排水量比の数値が大きいのは、そのクラシックデザインから来るオーバーハングの大きさで、水線長が短いせいです。

最近の考え方のひとつですが、欧米でもクルー不足は同じ問題であります。それで、フォアステーに大きなジェノアを設置して、すぐ後ろ側にもう1本ステイがあり、そこにはセルフタッキングジブか、小さなセールが設置してあります。前側の大きなセールはどう見てもタッキングしにくい。インナーのフォアステーをかわせないと思うのですが、使い方は、近所を走ってタッキング回数が多くなる時は、内側のセールを使い、簡単操船を楽しむ。そして、ロングのクルージングに行く時は、殆どタッキングは無くなりますので、外側の大きなセールを使う。そういう考え方だそうです。なるほど。現時点では大型のヨットにこういう艤装がされている事があります。

クルー不足の今日、シングルかダブルハンドで楽に操船できるというのは重要になこと、そうしますと、やれ130%だ150%だとジェノアをいろいろ論議してきたものの、通常の近場のセーリング、いわゆるデイセーリングとしては、ノンオーバーラップとかセルフタッキングとか、そういうセールを採用した方が良いだろうし、それでも走るヨットというのが良いんじゃないかと思う次第です。
それに、クルージングに行く場合でも、エンジンを使う事は多いし、セール出しても、強風でも走れる。

ただ、微風とかになりますと、大きなジェノアがほしいとか考えるかもしれません。でも、微風で、ジェノアが150%になったとしても、そう大きくは違わないのではないでしょうか?その他の状況での使い方も含めて考えますとどうでしょうか?

という事で、レース以外なら、セルフタッキングジブか、或いは100%〜110%ぐらいのジブで走るのが良いと考えます。それでも走ってくれるヨット、つまりはハイパフォーマンスクルージング艇をお勧めする理由でもあります。これにあとは、ジェネカーをどうするかの方が、遥かに面白さを追加できると思います。

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