第五十話 ヨットの要素

カタログを見る時、最も気になるのが排水量とバラスト重量です。それが何%あるんだろうと、必ず計算してみます。バラスト重量÷排水量です。シングルハンド、もしくはダブルハンド程度で、楽にセーリングし、快走を味わえるヨットという事を常に考えます。バラストを除いた船体の重心がどこにあるのかはデータはありません。それは水線から上の構造物で想像します。その上で、バラスト比を計算してみます。

最近のキャビンヨットは当然ながら水線から上の構造物が大きいので、ハルの重心は高いだろうなと想像します。そしてバラスト比はだいたい30%以下ぐらいが多いし、やや排水量も重めでもありますので、大きなセールを張って、軽風は走らないだろうな、中風ぐらいならどうだろう? もっと風が強くなってきたら、スタビリティーの関係上、無理かなとか考えます。という事は。こういうヨットのセーリングにおける良い感じというのは、幅が狭いのかな?と考えます。

もちろん、これは批判では無く、そのヨットのコンセプトを見出す手法です。従って、キャビンヨットでは、大きなキャビンを生かして、その居住性を楽しみ、クルージングはエンジンと、良い風の時のプラスセーリングという感じかな?そういう想像をします。

軽いヨットは軽風でも走ってくれるだろう。中風域ではどうだろう? シングルかダブルハンドでの前提での話です。バラスト比があまり無いなら、強風は無理だろうなと考えます。110%ぐらいのジブなら、もうちょっと行けるか?でも、もし、バラスト比が高く、充分に重心が低いなら、強風でももっと行けるか?

強風でも行けるというのは、無理してでは無く、その風で快走を味わええうという意味です。スタビリティーが低ければ、その風ではリーフする事になって、その風での快走は諦める事になります。

ただ、ヨットの言う、高い低い、速い遅い、等々は全て相対的である事は言うまでもありません。
バラスト比が高いなら、そのれだけ強くなった風でも充分に耐えられる。だから、ショートハンドでのセーリングには欠かせない要素だと思います。

一方、別な面を見ますと、違う様相が出てきます。排水量ですが、重い方が、走らないかもしれませんが、動きが鈍くなり、その分、乗り心地という面では良い。という事は、クルージングには重めが良いとも言えます。つまり、この事はセーリングとクルージングでは、相反するという事になります。ですが、外洋のように、何日も何日も洋上に居る場合と、あっちこっち寄りながらのクルージングとでは、また望む内容も違ってくる。

それで、セーリング+沿岸クルージングでは、やや軽めで、レスポンスが良く、スタビリティーの高いヨットが良いかなと思う次第です。そのヨットに、大き目のメインと、小さ目のジブで、軽風から、ある程度の強風域まで快走を楽しめるヨット、さらに、ハルが硬いなら申し分無しという具合です。

こういう事をデータから計算する式がありますから、そこから判断して、ヨット選択の一助とする方法があります。排水量に対するセール面積、水線長に対する排水量、そしてバラスト比です。
残念ながら、ハルの硬さを示すデータはありません。でも、仕様書を良く読んで、想像する事はできます。

同じコンセプトのヨットで、いくつかの候補を比べる時、こういう数学がちょっと役に立つと思います。但し、各要素は複雑に絡み合っています。それも相対的でありますから、完全に解るわけでは無いと思います。でも、ある程度の理解はできるのではないかと思います。

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