第四十二話 セール

ヨットには殆ど燃料代がかからない。でも、本当はかかっています。滅多に燃料を入れたりしないので、燃料代なんかを考える事はありません。しかし、まてよ?

ヨットの主機はセールでした。エンジンは補機です。補機には燃料はあまりかかりませんが、主機には本当はかかっている。ただ、違うのは徐々に燃料をすり減らしているような物。セールはパワーですし、使えば使う程に、そのパワーを失っていきます。つまり、これは燃料と同じ事。ただ、しょっちゅう注ぎ足したりしないだけです。

20年も使えば。例え破れていないにしても、相当パワーを失っています。クルージング目的であるなら、セールが伸びていようが、あまり気にする事は無いかもしれません。でも、セーリングを気にしますと、この伸びたセールが気になります。

セールが伸びて、ドラフトは深くなったり、バックステーを引いても、深い。そういう時に強風に合いますと、本来、セールがちゃんとしていれば快走できるのに、ヒールばかりが大きくなって、風をどんどん逃がさざるを得ない。上り角度もへったくれも無くなります。

この事は、クルージングであっても、セーリング中は同じ事。ちゃんとしたセールの方が、ちゃんと走れるのは当然であります。その方が楽にもなります。でも、セールを新調するとなると、結構なお金がかかります。でも、日頃、燃料代を使っていないので、その燃料代と考えてはどうでしょう?

月に¥5,000円の燃料代。年間では6万円、それが10年経てば、60万、20年なら120万にもなります。車だって、月に1万は最低使うじゃないでしょうか?

そういう燃料代、パワー代と思って、できればセールを新調されたらどうでしょう。大きな出費ではありますが、セーリングはぜんぜん違ってきます。せっかく良いヨットでも、セールが駄目なら、本来の性能を発揮できなくなります。

ある30フィートのヨット、セールが伸びて、丸くなっていました。風がちょっと強くなったら、どんどん風を逃がす、それでも、大きくヒールしてしまう。それで、角度を落としていきます。仕方ないので、ジェノアをどんどん巻き取ります。こういう時、残念な気持ちが残りませんでしょうか?もっとちゃんとしたセールなら、快走を味わえるのに、と思われた事は無いでしょうか?

風とセールはパワーバランスです。風のパワーが勝つ時は、セールパワーを抜く。リーフをする前に、セールをフラットにして、ツウィストを大きくして、それでも風の方がパワフルなら、リーフという事を考えます。でも、このリーフする前の、風とのバランスが取れた時が、最も快走できる時かと思います。

風が弱いと、ヨットの方が勝っています。それで、風が上がってきて、ヒールも大きくなって、でも、そこで、セール調整をしながら、風とヨットのバランスが取れた時、そのヨットは快走しますね。
風のパワーはいろいろ変化しますが、それに対すセールのパワーは古くなると、パワーを失いますから、風に対して、以前より早めに負けてしまう。ですから、そのヨットの本来の性能を見る前に、風に負けるので、快走はお預け状態です。

セーリングを遊ぶという意味では、これはとっても重要であります。クルージングでも、セーリングする時は、その方が楽でもあります。

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