第二十八話 クルージング艇の流れ

特に、20年ぐらい前からでしょうか、徐々に幅が広くなり、フリーボードが高くなり、キャビン拡大の一途を辿っています。そこにクルー不足が来て、オーナーの高齢化もあり、電動ウィンチ、メインファーラーなんかも設置され、ショートハンドにおけるクルージングを可能にしようとしてきました。

これらの変化につれて、セーリング性能というより、より快適性はどこにあるかという事で、キャビンの充実が図られ、セール操作も楽になっていきます。同時に、キャビン拡大によって、重心は高くなり、重量も増す。バラスト比はかなり低くなってきています。30%以下も結構多い。

でも、セーリング中心では無く、クルージング中心ですし、エンジンの使用も多い。セールは少し控えめのサイズにして、程よい時だけセーリングをする。これはこれで、沿岸のクルージングには、より快適で良いかもしれません。それに、最近のちょっと大き目のヨットには、発電機とエアコンが搭載され、より快適になります。

パワフルなエンジンがあって、電動でセールを上げたり、ファーリングですから、高齢者でも、そんなに体力を要しません。旅をするにはもってこい。バウとスターンにキャビンがあって、真ん中に大きなメインサロン。時には、バウとスターン、それぞれにトイレが付いている。まあ、これは多分、チャーター用のレイアウトかなと思いますが、その他、冷蔵庫、温水は当たり前。コクピット後部にもシャワーが出るというのもあります。

つまり、このヨットを使って、沿岸の旅に出たり、アンカーを打って、海水浴を楽しんだり、いろんな楽しみが想像できます。でも、大きくなりますと、風が強いとマリーナからの出し入れに結構困ります。それで、バウスラスターを設置するようになり、これも、以前より楽になってきました。

その後、これは、今の所、大型艇ですが、コクピットに居る人達とキャビンに居る人達が分離してしまうわけですが、それをボートのように、それぞれが分離しないように、一緒に遊びに行っているわけですし、ですから、コクピットとキャビンの段差を少なくして、入口を大きく、窓を大きく儲け、互いのコミュニケーションが取りやすく、より一体感を持たせ、キャビンにもぐりこむ感じを少なくしてきています。

そして、さらに、楽にするために、ボートでは既に採用されていた、バウスラスターとエンジンのコンビネーションをコンピューターでコントロールして、さらに、マリーナの出し入れが楽になってきています。

こういう流れを見ますと、ヨットとしてのセールはあるものの、少しづつパワーボートに近づいていないか?なる程、世界は圧倒的にパワーボート市場の方が大きい。ボートの場合の、コミュニケーションや、エンジン操作等々、この方が楽だという事でしょうか。

かといって、これから先、セールを無くす事は無いでしょうから、時にはセーリングも楽しめる。そういう意味では、大型艇ばかりか、もっと小さなサイズにもこういうコンセプトが広がると、ひょっとしたら、ボート派から、こういうヨット派への転向もあるかもしれません。

クルージング艇は、いかに快適にクルージングができるかというのがメインテーマですから、その方向性としては、かなり良くなってきました。ですから、もっともっと楽にクルージングができます。
ナビゲーションも、今日ではGPSがあります。どこ行くにも、そんなに難しい事では無くなりました。

後、あるとしたら、走る海域によっては、潮流が激しく、時には8ノット、9ノット流れる場合があります。これではヨットはかないません。それで、トップスピード15ノットぐらい出るようになれば、潮流が収まるのを何時間も待つ必要が無くなる。といっても、キールがありますからね。

という事は、リフティングキールというのが昔からあります。こういう時は、キールを上げて、もちろん、セール無しで、エンジン回転を上げて、潮流を乗り越える。そういう手も無いでは無い。もちろん、相応のエンジンも必要ですが。

一方で、そういう潮流とかを気にしないで走れるパワーボートはこういう点は良いのですが、でも、高速で走ると、それはエンジン音は煩いし、波に当たるショックも相当なもの。そこで、出てきたのがヨットマンズボート。高速は出ない。と言っても、いざという時は20ノットオーバーは出ます。普段のクルージングスピードは20ノット以下。この程度のスピードで、ボートに乗りますと、実にゆったりしています。

ボートが高速化の一途を辿る一方で、こういうヨットマンズボートが出てきて、スピードを要求しないから、エンジンは1基で良い。しかも、特に振動と音には気を使っている。だから、静かで、ゆったり走り、波叩きも少ないし、柔らかい。但し、1基だと細かいコントロールが2基がけより難しくなるので、バウスラスターを標準をしている。

トローラーというボートが、昔からありますが、これはもっとスピードがゆっくりで、ヨットの機走よりちょっと速いぐらいが基本です。でも、このくらいゆっくりしたスピードで走る時、フライブリッジ等の重心が高い場合は、結構ゆらゆらします。慣れれば問題はありませんが。それがもうちょっとスピードが出ると俄然安定度が増す。だいたい、ヨットマンズボートにはフライブリッジが無い。

ヨットというクルージング艇、ボートというクルージング艇、両方あります。

ヨットはセーリングの為のヨットと、クルージングの為のヨットがあり、ボートは釣りをする為のボートとクルージングする為のボートがあります。つまり、釣りをするか、セーリングするか、或いは、クルージングするかです。クルージングに割り切って考えるなら、ヨットマンズボートなんかに割り切れると、結構使い勝手は良いのではと思います。もちろん、当社のトゥルーノースはお薦めです。
そういう事を目指して建造されたボートですから。ヨットビルダーが造るボートです。

 

まあ、これはセーリングはできませんけど。だから割り切れればですが、クルージングの旅をするなら遥かに快適だろうと思います。

という事で、ヨット、ボートを問わず、クルージングという観点で見てみました。

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