第二十七話 クルー不足

最近のヨット事情の最大の問題点はクルー不足ではないかと思います。昔は、ヨットに乗りたい人が多かった。だから、クルーに困る事も無かった。そして、このクルーが将来的にはオーナーとして育って行った。だから、世代交代にも問題は無かったという事になります。

ところが、現代はそのクルー不足の問題は日本だけでは無く、世界的にあるようです。それは世界的に日常生活が快適になってきたという事が原因かもしれません。ヨットに乗れば、時には辛い事もある。車で旅をするなら、雨が降ろうが、風が吹こうが、エアコンの効いた車内で快適です。でも、ヨットはそうはいきません。

快適な生活が約束された日常生活で、何で敢えて、しんどい思いをするのか?これこそナンセンスとも言えます。

そこで、ヨット界はシングルまたはショートハンドで乗れますという方向に変わってきています。電動何とか、油圧の何とかを駆使しながら。オーナー達は高齢化、今はまだ良い。しかし、この先どうなっちゃうんでしょうね?

辛いセーリングを敢えてする理由は、それが面白いから。でも、その面白さが解らないと、ヨットをしようという気にはなりません。最近の子は、それじゃ何もしないかと言いますと、そういうわけでも無く、サッカー選手にあこがれたり、野球選手にあこがれたり、最近ではゴルファーもあります。
これらのスポーツも辛い練習が必要です。でも、やる。それはその魅力のお蔭。

ヨットやって、将来はプロになって大金を稼ぐという道はありませんが、何も彼らが、それだけを目指しているわけでも無いでしょう。殆どの人達はプロにはなりませんし。やはり面白いからではないでしょうか?

という事は、ヨットは面白いという魅力を広げる必要がある。その他、いろいろ問題はあるだろうけど、一番大事なのは、ヨットは面白いという魅力を広げる事にある。それが、社会的に認められるようになれば、ヨットに乗りたいという人は増え、クルー不足は解消される。解消されれば、世代交代もうまくいく。

ヨット先進国でさえクルー不足なら、まあ、日本程では無いでしょうが、そう簡単にヨットの魅力を広げるのは難しいかもしれませんが、でも、まあ、何か考えた方が良いには違いない。あっちこっちでヨット体験というのをやってはいる。スクールもある。維持費の問題はあるにせよ、クルーなら、そんな事は考えなくて良い。

ある方、ネットで、クルーでは無く、一緒に乗りませんかと出してあります。それで入れ替わり立ち代わり、いろんな人がやってくる。私も何度かお手伝いさせて頂きました。でも、気がつく事は、同じ人が何度もやってくるというのが少ない。一度でOKてな感じ。という事はあまり面白く無かった?

人を集めるのも大切なんでしょうが、それより、今現役で乗ってある方々が、いかに面白さを味わうか?その方が重要ではなかろうかと思います。自分が面白いから、しょっちゅう乗りたくなるし、面白いから誰かを誘いたくなる。その面白さを、自分で感じる面白さを、ゲストにも分かつ。それをゲストが面白く無いと思うなら、仕方ありません。

一般的には、ゲストが来ると、穏やかに、あまりヒールもさせず、どちらかと言うと、セーリングよりも、飲み食いと会話に重きがあるように思えます。ヨットは環境的に海に出たという雰囲気造り。

何年も前に聞いた話、ある方初めてヨットに誘われて、乗ったものの、何が面白いのか?と尋ねられた事があります。マリーナから出たら、セールは上げるものの、すぐにビールを手渡され、弁当食べながらの会話となり、たまに、方向を変える。そして、また会話が続く。どこかに上陸したなら、まだ何か、そこでの散策ができますが、そのままぐるりと回って帰る。また、お願いしますとは言ったものの、何が面白いのか、と思ったそうです。

大きなキャビンに、みんなで座って、お酒を飲んで。それも確かに良いが、ヨットであるという、すごいなという感じは、最初だけで、後は、会話が楽しいかどうか?これだけなら、どこかの居酒屋で、飲んだ方が、何でも注文できるし。1回体験すれば、もう十分かもしれません。

ヨットでなければ味わえない面白さを、味わう必要があります。それは、セーリングするか、或いは、どこかに行くか?ですから、ゲストが来た時、オーナーが思う面白さをそのまま見せてあげる方が良いかと思います。食事やビールじゃなくて、ヨットならではの遊びをです。それをゲストが面白いと思うかどうかは、知った事ではありません。それがヨットです。気に入った人はまた来るでしょうし、気に入らなかった人は、いずれにしろ来ない。

それが終わった後のビールは、格別であります。それは居酒屋で飲むビールとは違う味がする。
ですから、ヨットでなければ味わえない。

こういう流れを造るなら、まずはオーナーがヨットを堪能して、楽しむ事が必要で、もし、現役オーナーが楽しんでいないとしたら、クルーが来るわけが無い。 ゲストに、ヨットの魅力が解るわけが無い。という事で、まずはオーナーが楽しんで頂きたい。で、どこかに行くのは簡単じゃありませんから、デイセーリングを遊びましょうという理屈になります。クルージング派の方々も、普段はセーリングを遊んで、ビュンビュン走らせて面白さを見つけて頂きたいと思います。

もし、今あるヨットのオーナー達が、どんどん楽しく遊ぶ事ができるなら、全ては解決するのではないかと思います。クルーも集まるし、ヨット人口も増える。世代交代も問題無し。ところが、現役ヨットが動かないとするなら、そこで流れがストップしています。何かがおかしい。それで、デイセーリングを薦めています。クルージングの人も、レーサーの人も、普段は気軽にセーリングを遊びましょうという事です。気軽ですが、真剣にセーリングをしましょうという事です。宴会はその後。海で宴会したら、主役が宴会になっちゃう。セーリングを主役にした方が面白いと思います。

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