第二十六話 デイセーラー変遷

従来、デイセーラーというコンセプトは、小さなヨットで、気軽にセーリングを遊ぶ。キャビンも無い。そういうヨットでした。しかし、1990年代に入って、アレリオン28の投入で、状況は変わります。そのアレリオンを生んだアメリカでさえ、最初はほとんど売れなかった。それが、やがて注目されるようになり、新しいデイセーラーコンセプトが認められていきます。

同じデイセーラーという言葉を使ったのですが、従来のデイセーラーとは全く違う事が知られてきた。セーリングを重視した遊びという事で、これまでには無かったコンセプトでした。クルージングでも無い、レーサーでも無い、でもハイパフォーマンスで、しかもシングルハンドで簡単にセーリングを楽しめる。それが、多くのヨットマンを魅了していきます。

レーサーはハイパフォーマンスヨットですが、その為には、クルーを必要とするし、レース以外で、気楽のセーリングを楽しむというわけにもいきません。それが今日のデイセーラーなら可能になる。それが魅力だったと思います。

とは言っても、シングルハンドを前提にしたヨットですから、いくらハイパフォーマンスであっても、レーサーのそれとは違います。デイセーラーコンセプトが世界中に受け入れられるようになって、デイセーラーは、レーサーのハイパフォーマンスを目指していきます。今がその過渡期ではないかと思います。

カーボンを使った船体で、より軽く、より強く、そんな感じです。どこまで行くのか?
  

さて、もう一方では、大型化していくデイセーラーです。もはやデイセーラーとは言い難いのですが、基本コンセプトは現代のデイセーラーコンセプトを踏襲しようと、こういう名前を使っているのかなとも思います。前話でご紹介したヨットです。

基本コンセプトであるイージーハンドリング+ハイパフォーマンスを維持し、シングルとは言わないまでも、ショートハンドでかなりの大型艇でも、コントロールを可能にしていいます。もちろん、電動や油圧の駆使ですね。それでいて、大型ですから、いくらキャビンが狭いと言っても、かなりは確保できます。

という事は、クルージング艇がキャビンを優先しだして、キャビンをアピールしていますが、一方で、あくまでセーリング重視、サイズをでかくする事で、キャビンを拡大、セーリングの邪魔をしない程度で。
  50フィート、60フィートのデイセーラー

そしてさらにもうひとつ、ハイパフォーマンスを目指しますが、同時に、スポーツ性ばかりでは無く、見た目の美しさ、滑らか感、乗り心地等々をもキープしていこうといのもあります。

一般クルージングヨットが、セーリングを離れ、キャビンに移った時、当然ながら、そのギャップを埋めようとするのが市場の動き。それを埋めたのがデイセーラー。そしてそのデイセーラーも進化し続ける。

ただ、セーリングを重視しますと、いろんな要素が要求されます。船体は軽い方が良い、同時に硬く、剛性も高く、そして安定性も高く。セーリングを重視するという事は、レーサーでは無いセーリングですから、そこから味わうフィーリングはどんなものか?それが重要になります。

これらは、大きなキャビンを造るより遥かにコストがかかる。
でも、その分、セーリングの質は違う。スピードが違う、滑らかさが違う、波叩きが違う。逆に、そうでないと、セーリング重視の意味がありません。

世界とは違って、日本では、まだまだの感がありますが、でも、徐々に広がりを見せてきました。
クルージング艇は楽しいヨット、一方、デイセーラーは面白いヨットと言えるかもしれません。

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