第八十三話 スポーツカーに乗って

スポーツカーは、若い人ばかりか、中高年齢層に人気が高いようです。昔、あこがれた車に、でも、当時は家族が居て、ファミリーカーにせざるをえなかった。それが今は、それができる。スポーツカーというのは、男心を高揚させる何かがありますね〜。

デザインは走る事を想定しています。荷物運ぶのがメインじゃ無い。人を運ぶのがメインじゃ無い。低い座席に座っただけで、その感じがもう既に違います。走ればもっと違う。例え、ゆっくりしたスピードで走っていても、何かが違う。それがスポーツカーの持つ遊びの心。それが男にはググッと来ます。役に立たない所が良い。余計な事に気をとられないし、シートに座っただけで、車の持つ
雰囲気が、気分を高揚させる。

車に興味の無い方も、一度、スポーツカーに乗ってみてはいかが? 或いは、座席に座って、雰囲気を確かめてはどうでしょう?

車が実用性を考えた時、車は遊びから働く車に変わる。室内の広さ、天井の余裕、トランクの大きさ、燃費の良さ、そういう事で、車は大いに役に立つ。我々も、そのお陰で、便利を享受できるわけですが、同時に無くしたものもある。何でもそうですが、ひとつ何かがあれば、必ずその反対に影を落とします。5人がゆったり乗れて、エアコン効いて、音楽もDVDも今時はあります。もう至れり尽くせりです。何も文句はありません。でも、無くした物もあります。

それは何か? なんてことは無いのでしょうが、それは気分。遊びの気分ですね。高揚感とも言えます。それは無くても、誰も困りません。自己満足かもしれません。例え、そうであっても、その高揚感は、何とも言えない気分、いい気分にしてくれます。

スタイルの良さ、エンジンの音、走る安定感と感触、加速感、レスポンスの良さ、それらは、実質的にそうで無くても、何ら困る事は無いのですが、気分を盛り上げてくれます。スポーツカーという性能の総合されたものが、乗る人にある種のフィーリングを与えます。遊びというのは、そういうもので、何ができるというのも重要かもしれませんが、何と言っても、良い気分にさせてくれるかどうかではないかと思います。

ある詳しい方の話ですが、速く走る為には、ブレーキが重要だそうです。また、カーブしたり、いろんな動きをしますから、ボディー剛性が弱いと、クニャクニャして気持ちが悪いとか。総合した性能が必要で、一部だけ突出しても、その効力を発揮しません。軽くて、高馬力エンジンさえ積めば良いというわけにはいかないようです。

これはまさしく、ヨットも同じですね。軽く、でもボディー剛性は高く。高い安定性とあいまって、総合的走りが造られます。それが、乗り手の気分を高揚させる。そして、最小限の操作で、最大限の効果を得る。別にレース用では無く、スポーツカーの様に、セーリングを気分良く味わいたいだけであります。

たかが気分ではありますが、でもこれは遊びの本質です。これを否定して、便利さばかりを追うと、知らない間に、ストレスが溜まる。遊びを否定するつもりは毛頭無いわけですが、でも、気がつかない間に、便利さを追いかけてしまいます。便利は完全にオーガナイズされなければならない。
そうで無いと、ちょっとしたずれに、大きく反応してしまう。ちょっと電車が遅れただけでイライラしてしまいます。便利さとはそういうものでしょう。遊びは、余裕。機械の遊び、人間の遊び、ちょっとぐらいのずれがあっても、遊び心は、余裕で受け止める。ですから、遊びが人に心の余裕を与えるのではないでしょうか。そして、心に余裕があると、何でも受けいれる事ができ、それがまた遊びを生み出すのかもしれません。遊び=心の余裕という事になりましょうか。寛大な心ですね。

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