第六十六話 ステアリングホィール

ラットとも言いますが、クルージング艇にとっては、このラットが圧倒的な人気です。コクピットの邪魔にならないし、自動車的な感覚で操船ができます。

ステアリングホィールはその前に立っているピデスタルという物に設置され、そのトップにはコンパスが設置されています。中身は、ステアリングが設置されるシャフトがあって、その軸にワイヤーがかけてあり、真下に伸びる。そこからブロックを介して、後部に行き、扇条のコートランドという物につながり、再び、ピデスタルに戻る。エンドレスです。そのコートランドは扇子の軸に当たる部分がラダーシャフトに固定されています。ステアリングを回せば、シャフトが周り、コートランドを左右に動かし、ラダーの角度を変える。

現在ティラー仕様のヨットでも、スペースさえあれば、ステアリングホィールに変更する事ができます。小さなヨットはこのスペースが無い為、ラットは無理という事になります。

ステアリングホィールのメリットは、上記しました、コクピットの邪魔にならないという事ですが、他には、ラダーから伝わる力が軽減されます。さらに、ラットの直径がでかい程、軽くなる。車と同じような感覚で操作ができる。但し、舵のニュートラルな位置がわからなくなるので、ラットに印をつけて、ラダーの中央位置が確認できるようにされます。また、上記のワイヤーが伸びる事がありますので、締めるというメインテナンスが必要ですし、滅多に無い事ですが、切れるという事もありますので、たまには、下に潜り込んで覗いて見た方が良い。

ピデスタルの上にコンパスが設置されます。そして、その周りにステンレス製のパイプが設置されます。これはピデスタルガードと言いますが、そこには、計器類を設置する事ができます。ウィンドやデプス、最近ではGPSも設置されますので、目の前で見れて、操作もすぐできる。この欠点は、コクピットに座る人達には見えないという事です。

多くの場合、このピデスタルにエンジンコントロールレバーも付いてます。ですから、ステアリングを握りながら、姿勢を変えずに、そのままエンジンコントロールができる。最近はギヤシフトとスロットルの両方を兼ねたシングルレバーが多くなりました。2レバーの場合は、ギヤシストをする際は、必ず一旦スロットルを下げて行う必要がありましたが、シングルではそんな事は気にしなくて良いようになりました。

素材は、通常はステンレス。その他アルミやレーサーなんかではカーボン製を使います。あるレーサーのオーナーは大口径のカーボン製に変えられた。軽くブローが入っても、ステンレスやアルミでは解らない感覚も、カーボンなら手にふっと感じる事ができるそうです。

デザインもいろいろで、ダブルスポーク、スポークがクロスしていたり、おしゃれなデザインもあります。革巻きなんかにしますと、滑らないし、寒い冬には冷たさも軽減される。最近はホィールのリム、外側の輪ですね、これをチーク製にしたりとか、そういうのもあります。ある高級ヨットのオーナー、カスタムで職人にスポークまで木製のラットを作らせた。この美しい事。確か、それだけで、70万かかったとか。写真撮ってとけば良かったな〜。

その他、折りたたみができるとか、簡単にとりはずしてパルピットにかけておけるとか、停泊してコクピットで過ごす際の邪魔にならないように、というのもあります。

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