第三十五話 これからの傾向

クルージング艇、最も一般的なコースタル艇が、今後どんな変化をしていくのかな〜と思っています。再三書きましたが、幅が広くなり、高さも高くなり、大きなキャビンを実現してきました。まあ、もう、これ以上はどうかな〜という感じです。それで、次はどういうデザインをしてくるのか?

ある兆候があります。キャビンの採光をもっと取り入れて、明るいキャビンにする。従来のキャビンは潜り込むような感じですが、それをもっとコクピットとの段差を少なくして、明るい部屋にして、もっと家の部屋のような感じと言いますか、そういう傾向が少し見えてきました。

あるヨットは、50フィートですが、コクピットの床を下げて、キャビンへ入るのにステップが三段しかありません。入口の両サイドのバルクヘッドには、大きな窓がある。明るいキャビンです。キャビンはもはやヨットのそれでは無く、リビングルーム。そんな感じ。

まあ、これは50フィートというサイズですから、そういう事も可能なのでしょうが、多分、それ以下のサイズにおいても、もっと明るいリビングルームというのがキーワードになるのかな〜?

機器類としては、もう既にいろんな装備が設置可能となり、価格は兎も角、もはやこれ以上設置するような物は無いかもしれない。自宅にある物は、なんでもある。後は、価格や設置できるヨットのサイズの問題とか、そういうレベルです。それで、ヨット自信の変化は、この明るいキャビンという事になるのかな〜?そんな気がします。

それと、エンジンを使ってのマリーナの出し入れ。エンジンとバウスラスターのコンビネーションで、
ジョイスティックを使ってのコントロール。これで、出し入れも簡単にできるようになる。でかいヨットの難関は狭いマリーナからの出し入れです。これで、例えば、50フィートでも、シングルで簡単に出せるようになりますと、これは気軽さが手に入る。この事は遊びには重要なポイントですね。

マリーナから出したら、オートパイロットをかけて、電動ウィンチを使って、セールを簡単に展開できる。メインファーラーの電動とか油圧もあります。それなら、クルーなんか不要ですし、思いのまま。シングルハンドが簡単にできるようになる。

一方、装備を増やしたら、その機器類のメインテナンスは益々重要になります。快適に遊ぶには、日頃のメインテナンスが欠かせない。こればかりは、オートマチックとは行きません。

進化すればする程に、その目的とするコンセプトは濃縮され、分化していきます。オートマチック化が進む一方で、シンプル化、マニュアル化も進み、操船自体を楽しむ派と、それをあくまで道具化して、違う楽しみ方をする派とに別れます。それがますます顕著になっていく。進化の当然の帰結ですね。

これはセーリング派と、クルージング派の明確な分離をあらわすのかもしれません。デイセーラーは簡単にシングルで、セーリングの醍醐味を味わう事ができ、クルージング艇も簡単にシングルでの操作ができる。目指す先は違うけれど、キーワードは簡単とシングルハンド。それが実現すれば、気楽に遊ぶ事ができる。気楽になれると、もっと回数も増える。世の中はどんどん便利になってきますが、自分の遊びたい方向は何か?これさえ間違わないで選択すれば、益々楽しくなってきますね。

分化して濃縮していくという事は、我々選ぶ側が、もっと明確な遊びのスタイルをコンセプトとしてもつ必要が出てきます。そうでないと、歯が痛いのに、眼科に行くような事になる。そんな馬鹿な事にならないように、自分自身の遊び方を持つ人が、より楽しめるという事になりますね。あれも、これもから、これを堪能したいという具合に。

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