第十五話 共有

楽しさは誰かと共有する事によって、その効果が増加しますね。ひとりで良い気分もありますが、誰かと一緒に良い気分なら、もっと楽しさが増幅されます。ですから、シングル派の方々も、たまには、誰かを乗せて、その楽しさを共有される事をお奨めします。

シングルはシングルの良さがあります。セーリングは集中し易いし、思い通りに自由にやって良いわけです。でも、たまに、誰かを乗せて、楽しんでもらうという意識は、楽しさの分かち合いであり、それは自分の楽しさにもなります。ですから、奥様、息子、娘、おばあちゃん、おじいちゃん、孫、友人、会社の部下、上司、取引先でも誰でも、セーリングの楽しさを共有して頂きたいと思います。

そんな時でも、操作はシングルハンドです。仮に、舵を握らせても、意識はシングルハンドです。シングルハンドが可能だからこそ、誰とでも楽しさを共有できます。実際、一緒に乗って、楽しんで頂けると、こっちも嬉しくなりますね。

考えてもみますと、この共有があるからこそ、シングルでのセーリングも、また違ったニュアンスを持ち、面白さという感覚が存在できるのかもしれません。シングルにこだわり、シングルしか乗らないという事では無く、共有する事で、シングル時にも、いっそうの面白さを感じる事ができるのではないでしょうか?

実際に誰かを乗せると、自分だけセーリングに集中してというわけにはいかなくなります。初めて乗る人にとっては、セーリングの面白さが解るまでにはならないとは思いますが、少なくともセーリングの楽しさを味わってもらいたい。エントリーはそこからです。

エンジンをカットして、風の力で走るヨット。それは魅力的であります。でも、それだけでは30分もじっとコクピットに座っていますと、最初の感激は減少してきますね。そうしたら、舵を握ってもらって、真っ直ぐ走ってもらう。舵を握るというのは、最も動かしている、走らせているという気分になれますから、そこに楽しさを感じます。まだ、面白さとは言えないでしょうが。

理屈は解らないでも、走らせている気分になれます。そこに少しアドバイスを与えて、そのレベルをほんの少し上げてやります。そうやって、楽しさを味わって帰っていただきたい。

楽しさは、音楽や飲み食いだけではありませんね。オーナーの弁舌爽やかなトークだけでも無く、やはり主役はセーリングにあります。でも、初心者であっても、穏やかに、穏やかに、あまりヒールしないようにとだけ考えては、案外ゲストは退屈してくるものです。ですから、ちょっとしたスリルなんかも味わってもらって、醍醐味の一部でも味わってもらって、面白さの片鱗でも見せておくのも悪く無い。

スプレーだって、そう寒くも無い時なら良い。水族館のイルカショーでしたら、大喜びですよ。それと同じで、オーナーがそれを嫌わずに、大笑いしてあげれば、ゲストだってそういうものとして楽しめるはずです。非日常を安全の中で味わう。これぞセーリングであります。

そんなこんなもオーナーが、日頃セーリングを楽しんでやってるからできる事。共有は、オーナーの楽しみを共有するわけですから、日頃楽しんでいないオーナーのヨットでは、共有はできません。共有しても、楽しく無い共有になります。ですから、日頃、オーナーが楽しんでセーリングしている事が重要になります。

ですから、シングルで面白いセーリングをするも、誰かと楽しさを共有するも、全ては、日頃からオーナーがいかに楽しんでいるか?そこがポイントになるのではないかと思います。

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