第八十四話 コスト

小さなヨットでは、輸送コストが、ヨットの価格の割合に対して高くなります。欧米には、小さなヨットがたくさんありますが、多くはその国内で進水します。日本に輸送するにはコストが高くなる。ですから、小さなヨットは国産に限るという事になります。

しかしながら、日本では、市場が小さいうえに、小さなヨットはあまり見向きもされません。先日ですが、ブルーウォーター21のオーナーが引退するので、差し上げますと言っても、誰も貰い手がありませんでした。かなり手をかけたきれいなヨットでしたが、残念です。結局は処分されました。
結構良いデザインで、腰も強かったし、もったいない。

でも、もし、この21フィートをもらったとしても、同じマリーナに係留すると年間約35万以上かかります。これではちょっと考えてしまいますね。

日本にもっと小型艇を増やして、健全なピラミッド型の市場にするならば、小型艇は特に安くなければ、増えようが無い。車の駐車場なみなら、若い人達も気軽にヨットをやる事ができます。

若い夫婦なら、小さな子供が一人という程度なら、小さなヨットで、安く始められる。そういう環境がほしいものです。そして、やがては、彼らが大きなヨットになっていく可能性もあります。この夫婦の子供は小さな時から、ヨットに親しみます。ですから、きっと大きくなってからも、ヨットに違和感を抱く事は無い。そして、彼も、小さなヨットから夫婦で、子供を連れてヨットを楽しむ事になるでしょう。

子供の頃に過ごした環境は、大人になっても忘れないものです。そういう循環と言いますか、そういう環境を作ってこそ、初めて、ファミリークルージングなるものが現実となる。これらなしに、ファミリー、ファミリーと叫んでも、誰も家族で遊んだりはしない。現実に、まわりを見回しても解ります。
日本にファミリークルージングは無い。

マリーナも経営という事がありますから、係留費を下げるには躊躇はあるでしょう。でも、小型艇には特別の配慮を全国的にしていただければ、将来はきっとファミリーセーリングもありえるのではないかと思います。

小型艇なら気楽です。高校でヨット部に入らずとも、子供の頃から親しんでいれば、友達同士で、親のヨットを借りてセーリングに出るという場面もあるかもしれない。そうなれば、彼らはりっぱなクルーにもなるし、将来はオーナーにもなりえる。

そういう我々も、大きなヨットがほしいと言われれば、そこになびいていきますね。我々も生活がかかっていますし。でも、何とか小型艇をどんどん増やしていく方向が必要かもしれません。いつかそういう時代が来るかもしれません。

ブルーウォーター21はなかなかデザインも良かった。惜しいヨットです。再生なんかすると良いんでしょうが、再生はコストがかかる。古いヨットに、大枚をはたく人は少ない。ブルーウォーター24というのもあります。21のデザインに良く似ています。これも良いが数が少ない。

現代は大型化し、でも、クルーが居ないので動かない。これらを解決する変化がほしいものです。

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