第六十話 ヨットを始めよう

ヨットは難しそうとは良く聞くセリフです。でも、簡単です。車よりも簡単です。車だって、プロのドライビングレベルに到達するのは難しい。絵画だって、うまく描くのは難しい、陶芸だって、盆栽だって、ダンスだって、何だって、難しいのです。

でも、取りあえず楽しむ事ができます。うまいかどうかは別にして、自分が楽しむ、人を乗せて楽しむ、これぐらいなら難しくは無い。技術論は別にして、遊ぶぐらいならすぐに出来るようになります。
とりあえず楽しむ分には、これでも充分なのではないかと思います。

ちょっとだけ難しいのは、桟橋からエンジンを使って、外に出る時と帰って来た時に桟橋に着ける事。これにはちょっと練習が必要ですが、でかいサイズでも無い限り、そうは無いと思います。

クルージングヨットにはステアリングホィールに人気がありますが、最初は舵がどのくらい切れているか解らなくなる事があります。その点ティラーですと、自分がどの程度舵を切っているかは一目瞭然です。さらに、大きなヨットは風圧面積も大きく、風が船体に当たって、その影響を受けやすい。最初は、小さ目のヨットで、ティラーが良いかもしれません。いろんな操作もし易いし。何しろ、気軽になれるのが何よりかと思います。

ヨットを出したら、まずはメインセールを上げる。続いてジブセールを展開する。後は、舵を切って、
進行方向を決めれば、風が吹いてくる反対側にセールを押され、セールがバタバタしない程度に、ジブシートとメインシートを引けば、取りあえずはこれで走る事ができます。

セーリングの効率とか、スピードとか出だしたらキリが無いぐらいに難しくなります。でも、取り合えず、行きたい所に行ける、そしてマリーナに帰ってくる。その程度であれば、そう難しい事はありません。これで、ピクニックを楽しむ事ができます。まずは、これではないでしょうか?ヨットによって、操作性が違いますので、最初に検討する必要はありますが、それからは、回数をこなして、慣れる事、技術論よりも慣れですね。

できれば、最初は手伝ってもらっても、できるだけ早い時期に、ひとりで出て帰ってくるまでを、できるようになりたいものです。そうすれば、気軽に誰かを誘う事ができます。

大きなヨットにあこがれるかもしれませんが、自分で自由自在に扱えるヨットが最も楽しめます。最初は近所を頻繁に出て、気軽さをいつも携えて、大きな、動かないヨットを尻目に大いに楽しむ事を優先した方が良いと思います。ベテランだからと言って、大きなヨットが良いとは限りません。ベテランでも小さなヨットを好む方もおられます。それは何が違うか?フィーリングが違うんですね。

数年後に、もし、もっと大きなヨットに乗りたいという情熱が湧いてきたら、その時に、買い換えれば良いし、その方が良いと思います。もう慣れていますし。最初から大きいのは、やはり、動かせない、楽しめない、どこへも行かない、気楽でない、そういう事になりかねません。

ですから、最初は難しい事はしない、やや小さ目、ティラー、シングルハンド、体育会系の気分は排除して、リラックスして、セーリングが楽しめる事が重要かと思います。ですから、それがピクニックセーリングなのです。

これに慣れて、何回も乗っていきますと、誰もが自然に、もうちょっと良いセーリングをしたいと思うようになります。その時、始めて技術論が出てきます。もうヨットの何たるかも解ってきていますから、そういう技術論を聞いても、解りやすいかと思います。最初からは無理です。

これまでは、ただセールを風下側に出していたのが、セールの形状を考えるようになります。でも、それによってでも、スピードが2倍になったりはしません。でも、よりスムースになるし、自分の気分もそこに到達していますから、その違いも感知できるようになっているでしょう。ちょっとの違いが、気分的には大きな違いになると思います。

この段階になりますと、もはやセーリングはレクレーションの域ではありませんね。面白さ、趣味の世界、これから先が深いセーリングです。でも、好きな人だけがやれば良い。ピクニックのレクレーションでも良いと思います。楽しいのが基本です。何も遠くへ旅するだけがヨットじゃない。

やはり順を追って、進んでいった方が良いと思いますね。ヨットの進化を、そのまま順を追っていくようなものでしょうか。

次へ       目次へ